「いてっ! なんで足踏むんだよ!」

 明らかにこの少年は故意的に僕の足を踏みつけていた。それも踵で。その上グリグリとドリルで地面に擦り付けるように。

「客寄せなんて失礼なことを言うからだ。神社は参拝するところであり、祈りを捧げるところだ。だから決して客寄せのためにやってるわけじゃない」

 あれ? って僕は思わず首を傾けた。僕そんなこと口にしてた? 心の中では思ったけど、口に出したつもりはなかった。けれどどうやらこぼれ出していたようだ。
 口は災いの元とはよく言ったものだ。

「ごめんごめん、違うのか。それじゃあなんでこんなことやってるんだ?」

 学校で学級新聞を作る理由は、先生と生徒の交流を図りつつ情報を共有するため。客引きのためにやってるのではないとすれば、情報共有と、人助けといったところだろうか?

「ところで、占い調べるってなんだよ」

 胡散臭い。と言いかけた言葉はギリギリのところで食い留めた。だが、この少年は再び僕の足を踏みつけた。さっきは右足、今度は左足だ。

「いてっ! 今度はなんだよ!」
「自分の心に手を当てて考えてみるんだな」

 少年はそう言って、僕のことを睨みつけている。少年のその様子からして、胡散臭いと思ったことがバレたのだろうか。けれど今回僕は、それを口に出してはいない。だとすれば、僕はとてもわかりやすい顔をしていたことになる。
 こんな少年の前ならポーカーフェイスを気取らなくてもいいと、どこかで思っていたに違いない。そんな甘んじた考えが、僕の表情に表れてしまった結果だった。

「お前、お参りするんだろ?」

 さっさと行けと言いたげなその様子が引っかかるが、僕は小学生に本気で怒るほど大人気ない人間ではない。きっとこんな田舎でのびのびと育てば、多少言葉の作法も、のびのびとしてしまうのは致し方ないことだ。
 そんな風に自分を律しながら、僕は本殿へと向かった。