ふすまを隔てた先にある畳の間。そこもきっと客間の一つなのだろう。大勢の人が来る時には、このふすまを解放して使用しているのかもしれない。
そんな隣の部屋の隅に置かれている大きな仏壇。その前には白いご飯とフルーツがお供えされている。
キヨさんは仏壇の扉を開けてその前に正座し、仏壇の中に立ててあるロウソクにマッチで火を灯した。
火がついた後、一度手を合わせて拝んでこう言った。
「おじいさん、清彦、みーこちゃんが挨拶に来てくださったよ」
キヨさんはそう言って席を開けると、会釈した後にみーこさんはさっきまでキヨさんが座っていた座布団の上に正座をした。
みーこさんは一度、ろうそくの近くに置かれているお鈴を鳴らした。空気の間を縫うように、すうっと透き通った音がこの空間を浄化でもするかのように鳴る。決して主張しすぎず、決して高すぎず、低すぎもせず、チーンと鳴った音に合わせてみーこさんは手をそっと合わせた。
清彦とキヨさんは言っていた。きっとそれがキヨさんの息子さんの名前なのだろう。キヨさんの口ぶりから聞くと、やっぱりみーこさんは息子の清彦さんとも顔を合わせたことがあるのだ。
みーこさんはそっと目を開けて、仏壇の上に飾られた遺影を見上げた後、小さく頭を下げた。
飾られている遺影の中で微笑んでいるのが、きっと清彦さんだろう。写真は実際の年齢時のものかはわからないが、旦那さんはキヨさんと比べると少し若く見え、清彦さんも同じくそう見える。いや、実際の年齢を知らないのだからなんとも言えないが、清彦さんは特にお二人の年齢から逆算しても、若い。晩婚での子供だったなのならまぁ、しっくりくる年齢ではあるのだが。
「依頼内容拝見しました。万年筆を探していらっしゃるんですね?」
ちょうどみーこさんと入れ違いで僕が仏壇の前に座って、手を合わせた時だった。みーこさんは本題に触れた。
「そうなのよ。息子の万年筆を探しているのだけど、全然見つからないの。そしたらちょうど、あのあやかし新聞のことを思い出してね。神様のお力を貸してもらおうかと思って」
その後に「お願い事を人に託すなんて、罰当たりだったかしら?」と言いながら、うふふと笑うキヨさん。その笑みには茶目っ気を感じる。
「いえいえ、うちの神社を登るのは大変ですから。もう少しお金があればエレベーターでもつけたいところなんですけど……」
ご年配の多いこの村で、確かにあの急斜面の階段は大変だとは思う。
「あら、いいのよ。豊臣神社はあのままで。なんでも時代に合わせる必要はないわよ」
僕が手を合わせ終えたタイミングで、キヨさんは再び隣の部屋へと戻ろうと、僕達を促してくれた。
そんな隣の部屋の隅に置かれている大きな仏壇。その前には白いご飯とフルーツがお供えされている。
キヨさんは仏壇の扉を開けてその前に正座し、仏壇の中に立ててあるロウソクにマッチで火を灯した。
火がついた後、一度手を合わせて拝んでこう言った。
「おじいさん、清彦、みーこちゃんが挨拶に来てくださったよ」
キヨさんはそう言って席を開けると、会釈した後にみーこさんはさっきまでキヨさんが座っていた座布団の上に正座をした。
みーこさんは一度、ろうそくの近くに置かれているお鈴を鳴らした。空気の間を縫うように、すうっと透き通った音がこの空間を浄化でもするかのように鳴る。決して主張しすぎず、決して高すぎず、低すぎもせず、チーンと鳴った音に合わせてみーこさんは手をそっと合わせた。
清彦とキヨさんは言っていた。きっとそれがキヨさんの息子さんの名前なのだろう。キヨさんの口ぶりから聞くと、やっぱりみーこさんは息子の清彦さんとも顔を合わせたことがあるのだ。
みーこさんはそっと目を開けて、仏壇の上に飾られた遺影を見上げた後、小さく頭を下げた。
飾られている遺影の中で微笑んでいるのが、きっと清彦さんだろう。写真は実際の年齢時のものかはわからないが、旦那さんはキヨさんと比べると少し若く見え、清彦さんも同じくそう見える。いや、実際の年齢を知らないのだからなんとも言えないが、清彦さんは特にお二人の年齢から逆算しても、若い。晩婚での子供だったなのならまぁ、しっくりくる年齢ではあるのだが。
「依頼内容拝見しました。万年筆を探していらっしゃるんですね?」
ちょうどみーこさんと入れ違いで僕が仏壇の前に座って、手を合わせた時だった。みーこさんは本題に触れた。
「そうなのよ。息子の万年筆を探しているのだけど、全然見つからないの。そしたらちょうど、あのあやかし新聞のことを思い出してね。神様のお力を貸してもらおうかと思って」
その後に「お願い事を人に託すなんて、罰当たりだったかしら?」と言いながら、うふふと笑うキヨさん。その笑みには茶目っ気を感じる。
「いえいえ、うちの神社を登るのは大変ですから。もう少しお金があればエレベーターでもつけたいところなんですけど……」
ご年配の多いこの村で、確かにあの急斜面の階段は大変だとは思う。
「あら、いいのよ。豊臣神社はあのままで。なんでも時代に合わせる必要はないわよ」
僕が手を合わせ終えたタイミングで、キヨさんは再び隣の部屋へと戻ろうと、僕達を促してくれた。