◇
「ここがキヨさんのお宅ですね」
みーこさんが元気いっぱいにそう言って、指を指し示した先には大きな大豪邸。立派な門構えに、玄関の軒先には大きな松の木まである。さすがは田舎だ。家がでかい。
だけど僕のばーちゃんちよりも倍はあるだろう、大きさだ。
「おはようございます!」
みーこさんは元気に挨拶しながら、インターホンを押した。しかし、誰も出てくる様子がない。
「あれ、お出かけ中でしょうか」
みーこさんは首を傾げて「んー?」と唸りながら人差し指を顎に当てている。今もそうだが、普段から巫女装束に身を包んでいるからかどこか大人っぽく見えるが、こうやって一つ一つの仕草を見ると、とても愛らしく年相応に見える。
「こっちにいるぞ」
そんな声が聞こえたかと思えば、左右はすでに松の木の上に座って家の中を覗いている。
「あっ、こら、不法侵入だぞ」
思わずそんな言葉をかけたが、神使にとっても不法侵入という法律が適用されるものなのだろうか、と疑問に思う。
けれどこれはモラルの問題だ。マナー違反だ。そう思って再び左右に声をかけようとしたら、インターホンから声が戻って来た。
「おはようございます。あら、昨日のお兄さん。それにみーこちゃんも」
インターホンにはカメラが付いているらしい。そこから見えた姿に、キヨさんの声は少し弾んでいた。
「ちょっと待っててね」
そう言った後、ブツリと声が切れた。するとしばらくして玄関の鍵を開ける音が聞こえたと同時に、キヨさんは顔を出した。
「二人でどうしたの?」
「あっ、いえ、昨日は依頼の手紙ありがとうございました。きちんと受け取ったご連絡です」
「あらあら、わざわざご丁寧に。せっかくだから上がってお菓子でもどうかしら?」
「えっ、でも……よろしいのですか?」
「もちろんよ」
さすがは神社の巫女さん。みーこさんとキヨさんは顔見知りの様子だ。キヨさんは昔から、あの豊臣神社へとお参りに来ていたのかもしれない。
「さぁ、佐藤さん行きますよ」
「あっ、はい」
キヨさんはとっくに玄関を立ち去っていた。僕はみーこさんの後を追って、キヨさんの家の中へとお邪魔する。玄関の庭でふと松の木を見上げたけど、左右はすでにそこにはいなかった。
「左右ならきっと、すでに中ですよ」
みーこさんは僕の行動から察して、小声でそんなことを言った。
すでに中って、本当に不法侵入じゃないか。と言うか、不躾な奴だなぁ。
なんて思いながら玄関の扉をくぐり抜けると、大きな玄関口で僕は靴を脱いだ。その先には長い廊下が続いていて、先に歩いているみーこさんの後を慌てて追う。
家の中はとても清々しく綺麗に整頓されている。これだけ広いのに埃も落ちていなさそうだ。すっきりとした廊下の壁にはビーズを縫い付けられた絵。それは花瓶に入った花の絵で、きちんと額縁の中に入っている。それを横目に歩いて行くと、僕達は畳の客間に案内されていた。
「ここがキヨさんのお宅ですね」
みーこさんが元気いっぱいにそう言って、指を指し示した先には大きな大豪邸。立派な門構えに、玄関の軒先には大きな松の木まである。さすがは田舎だ。家がでかい。
だけど僕のばーちゃんちよりも倍はあるだろう、大きさだ。
「おはようございます!」
みーこさんは元気に挨拶しながら、インターホンを押した。しかし、誰も出てくる様子がない。
「あれ、お出かけ中でしょうか」
みーこさんは首を傾げて「んー?」と唸りながら人差し指を顎に当てている。今もそうだが、普段から巫女装束に身を包んでいるからかどこか大人っぽく見えるが、こうやって一つ一つの仕草を見ると、とても愛らしく年相応に見える。
「こっちにいるぞ」
そんな声が聞こえたかと思えば、左右はすでに松の木の上に座って家の中を覗いている。
「あっ、こら、不法侵入だぞ」
思わずそんな言葉をかけたが、神使にとっても不法侵入という法律が適用されるものなのだろうか、と疑問に思う。
けれどこれはモラルの問題だ。マナー違反だ。そう思って再び左右に声をかけようとしたら、インターホンから声が戻って来た。
「おはようございます。あら、昨日のお兄さん。それにみーこちゃんも」
インターホンにはカメラが付いているらしい。そこから見えた姿に、キヨさんの声は少し弾んでいた。
「ちょっと待っててね」
そう言った後、ブツリと声が切れた。するとしばらくして玄関の鍵を開ける音が聞こえたと同時に、キヨさんは顔を出した。
「二人でどうしたの?」
「あっ、いえ、昨日は依頼の手紙ありがとうございました。きちんと受け取ったご連絡です」
「あらあら、わざわざご丁寧に。せっかくだから上がってお菓子でもどうかしら?」
「えっ、でも……よろしいのですか?」
「もちろんよ」
さすがは神社の巫女さん。みーこさんとキヨさんは顔見知りの様子だ。キヨさんは昔から、あの豊臣神社へとお参りに来ていたのかもしれない。
「さぁ、佐藤さん行きますよ」
「あっ、はい」
キヨさんはとっくに玄関を立ち去っていた。僕はみーこさんの後を追って、キヨさんの家の中へとお邪魔する。玄関の庭でふと松の木を見上げたけど、左右はすでにそこにはいなかった。
「左右ならきっと、すでに中ですよ」
みーこさんは僕の行動から察して、小声でそんなことを言った。
すでに中って、本当に不法侵入じゃないか。と言うか、不躾な奴だなぁ。
なんて思いながら玄関の扉をくぐり抜けると、大きな玄関口で僕は靴を脱いだ。その先には長い廊下が続いていて、先に歩いているみーこさんの後を慌てて追う。
家の中はとても清々しく綺麗に整頓されている。これだけ広いのに埃も落ちていなさそうだ。すっきりとした廊下の壁にはビーズを縫い付けられた絵。それは花瓶に入った花の絵で、きちんと額縁の中に入っている。それを横目に歩いて行くと、僕達は畳の客間に案内されていた。