「私、佐藤さんには運命のようなものを感じたのです!」

 再び身を乗り出したみーこさんに、僕は圧倒されてしまっていた。
 ……なんと、運命とな。今時の若い方はとても情熱的な物言いをしてくれる。傷心しきった僕の心が思わず大きく揺さぶられてしまったではないか……。

「だって、今まで左右が見えたという人を私は佐藤さん以外に知らないのです!」

 麗しいお顔がなんだか輝いて見え出したのは、僕が何かの魔法にかかってしまったからだろうか。魔法……これが恋の魔法というのだろうか。

「お前のそれは病気だ。お前に必要なのは医者だな」
「佐藤さん病気なんですか!?」
「違うこいつの中身はかなりのむっつ……」
「いえいえ! 僕はいたって健康な好青年です!」

 左右の言葉を打ち砕くために叫んだ僕の言葉に、みーこさんは安心したようにホッと肩をなでおろした。

「自分で好青年とは、よく言うなお前……」

 完全に引いている左右の目など無視して、僕は勢い余ってついこう言ってしまった。

「ですので、僕にみーこさん達のお手伝いができるかは分かりませんが、世のため人のためになるのであれば微力ながら協力いたしましょう!」
「嬉しい! ありがとうございます」

 ——かくして、僕はあやかし新聞づくりのお手伝いをすることになってしまった。

「それで話を戻しますが、占い調べるとはどのように……?」

 そもそも僕には占いなんてしたこともなければ、不思議な力もない。至って普通な好青年だ。

「お前が好青年など、過大評価もいいところだな」

 左右の声が聞こえるし、見えはする。だがしかし、それだけだ。お化けだって今まで見えたことも感じたこともなければ、ラップ現象とやらも体験したことだってない。
 だから実際に僕がその占いとやらに役立つのかがわからない。

「占いというのは建前で、実際は左右が頼りなんです。彼は神使なので神通力(じんつうりき)が使えるので、それで依頼のものを探したり手助けしたりしています」

 なるほど……神通力とな。だから僕の考えていることがわかるのか。
 僕は左右に視線を向けると、その視線を跳ね返そうとでもするかのように、左右は僕を睨みつけた。

「なんだ。こっちを見るな、むっつり野郎が」
「このっ!」

 とうとう言ったな! はっきり僕のことをむっつりだと言ったな!
 勢いよく立ち上がろうとした僕をなだめるように、みーこさんは左右を叱りつけた。

「こら、左右!」

 みーこさんが「すみません、左右が口悪くって……」と言いながら申し訳なさそうに謝ってくれるが、やはり僕はこの生意気な小僧とはウマが合わない。すでに手伝うと言ったことを深く後悔し始めていた。