「……ここ、どこだ?」

 新しい電球も買い、ついでに醤油とみりんも買った。あとは帰るだけというタイミングで、僕は帰り道には別のルートを選択した。
 ばーちゃんの家には滅多に来ることはない。子供の頃は正月や敬老の日に家族で顔を出す程度。だからいつも通る道はたいてい同じで、ほとんどが車移動だった。

 僕はなぜか昔から行きと帰り道を別のルートを選択することが多々ある。その方が新しい店やら新たな発見をすることがあるからだ。
 だがその結果、今回のように迷子という情けない結末を生んだのだが。そしてこの結末を迎えることも多々あるのだ。その割にそんな経験から学べていない自分が不甲斐ない。

「えーっと……多分方角的にはあっちのはずだ」

 買い物だけだと思ってスマホを持って出なかったのも僕の敗因と言えよう。ジーンズのポケットには財布以外何も入っていない。
 道はひとまず一本道、どこかで左折できる道を見つけて折れようと考えていたそんな時だった。

 ——何かで困った人はいませんか?

 そんな一文が目に飛び込んできた。それはちょうど緑の木々に覆われるようにひっそりとした場所に佇む掲示板。木でできたそれは、雨風に打ち付けられて古びている。
 そんな年月を感じさせる掲示板には白い紙に筆でこう書かれている。

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・何かで困った人はいませんか?

あやかし新聞社の
松の木の麓に便りを結んで下さい。
当神社で占い、調べます。
もしかしたら手助けできるかもしれません。
できなかったらごめんなさい。

・探し物はございませんか?

あやかし新聞社の
松の木の麓に便りを結んで下さい。
当神社で占い、調べます。
もしかしたら見つかるかもしれません。
見つからなければごめんなさい。
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 ……なんともインチキくさい。そもそも占い、調べるとはなんだ。
 その上できるかも、見つけられるかもわからないところがまた、胡散臭さがぷんぷんだと思った。

 そんなメモのような紙の隣には、『あやかし新聞』と書かれたタイトル。A4サイズの新聞が貼り付けられていた。
 新聞と呼ぶにはいささか子供じみて見えるそれは、小学生の頃にクラスにあった学級新聞に近いものを感じる。
 興味本位から、僕はその新聞の内容に目を凝らした。