普通の店なら相手にしてくれなかっただろう。しかし見るからに普通ではないふたりは、じっと美波を見つめた。
「ご主人様、このひと迷い人ですね」
「ああ。ということは、お客様で間違いない」
いったいなにを言っているのだろう。美波は首を傾げる。
「ここは迷える人に古衣を与える古衣堂。お代はけっこうです」
「ええと……?」
「あなたに必要なものが、ここにあるはずです」
美波は戸惑う。お代はけっこうと言われても、彼女にはここでゆっくり古着を吟味している暇はない。
ただ、フレアスカートを履いている足が異常に寒く感じた。
「ボトムスですね」
またもや美波の思考を読んだように男が言うと、少年が彼女の手を引いた。
「こちらへ」
連れていかれたラックには、ずらりとボトムスがハンガーにかけられている。
「あのう、私……」
「いいから、見てください」
少年に促されると、自然に彼女の手がハンガーに伸びる。