駅に向かうと、いつもの寂れた光景からは想像もつかない、ものものしい雰囲気に彼女は圧倒された。
公衆トイレの前にパトカーが止められ、警察官が写真を撮ったり、立入禁止のテープを貼ったりしている。
「男が血まみれで倒れてたんだってよ」
「ケンカじゃないか?」
野次馬らしき近所の老人たちがトイレの中をのぞきこもうと背伸びをしていた。
「こっわぁ……」
横目で警察官の姿を見ながら通りすぎると、ぼやき声が聞こえてきた。
「まいったなあ、防犯カメラが壊されている」
それでは、帰りが怖いではないか。
美波は既にぞっとしていた。
(また不審者が出るかもしれない。スカートより、走りやすいパンツにすればよかった)
そう考え、ふと脳裏に細いデニムパンツがよぎる。
違和感を覚えたが、デニムのイメージはすぐに薄れていった。