(申し訳ないけど、私はあのおぞましい記憶と共存していく勇気がない)

 美波は決心して湯呑に口をつけ、中の緑茶を一口、こくりと飲み込んだ。

「ありがとう……」

 呟いた途端、強烈な眠気が襲ってきた。

 ぐらりと傾く彼女の体を、霧矢が支えた。

 霞んだ目に、彼の整った顔が映るが、それもすぐに見えなくなった。