(コンビニもないなんて……。ん? あれは……)

 通りを抜けきったところに、瓦屋根の落ち着いた雰囲気の建物を発見した。

 白い壁に茶色の格子戸。窓も細かい格子で、中の丸い照明の光が漏れて見える。

 思い切り和風の建物なのに、瓦屋根の上には古いランプがちょこんと場違いに置かれていた。仄かな灯りが、美波を招いているようだ。

(カフェか何かかな……)

 おそるおそる近づくと、『商い中』と書かれた看板が美波の目に入った。

 ここならば大丈夫そうだ。なんとなくそう思い、美波は思い切って格子戸に手をかけた。

 ──いや、かける寸前だった。

 戸がすっと、自動的に音もなく開いた。

「あれっ」

 少し驚き、美波は反射的に手を引っ込めた。

「自動ドアだったのか。書いてないからわからなかったなぁ……」

 誰かに見られていたら、地味に恥ずかしい。

 言い訳をしながら中に入ると、ふわりと独特な甘い香りが彼女の鼻孔をくすぐった。