聞いているだけで痛くなりそうだった。美波は耳を塞ぎたかったが、体が自由にならない。
「生きたまま、何匹もの猫の首を切った。そうだろう!?」
屈んだ美波の爪が、うずくまった男の首に食い込む。
爪は皮膚を突き破り、血を滲ませた。
「猫だけでは飽き足らず、今度は人間を苦しめるのか。何の恨みもない人間を」
男の喉から、言葉にならない悲鳴が漏れた。
最後に目にした光景が信じられないものだったせいか、痛みのせいか、もう意味のある言葉を紡ぐことは彼には不可能となってしまったようだ。
「もう正気を失ったのか。しかしこれくらいで終わると思うなよ。そうだ、生きたまま焼いてやろうか」
「ヒイイイィィ」
ダンゴムシのように丸くなる男の背中を、美波の体が蹴りつける。
(もうやめて)
美波は意識の中から、自分を乗っ取った誰かに訴えた。
けれど体は彼女の意志とは反対に、男を痛め続ける。