(私はいったいどうしちゃったんだ。なにがあったの?)

 何も思い出せない。無理に思いだそうとすると、頭痛がした。

(警察……そうだ、警察に行こう)

 パニックになりかけながらも、美波はゆっくりと踏み出した。

 誰かに道を聞こうとする。しかし、不思議と通りには人の姿がない。

 派手な電飾、食べ物を蒸しているような湯気や食欲を誘う香り。そういうものが充満しているのに、人はいない。

「なんなのよ……」

 すごく観光地っぽいのに観光客がいない。怪しげな商店が並ぶばかりで、交番がない。

 歩くたび、不安が増していく。

 長時間夜の街を一人でさまようのは危険が伴う。

 美波はどこかの店に入る決心をした。

(灯りが点いているってことは、中には誰かがいるはずよね)

 きょろきょろと左右を眺めて歩き、女性がひとりでも入りやすそうな店を探す。

 怪しい電光看板は彼女を警戒させるばかりで、なかなかこれという店に出会えない。