一日分の講義が終わったらバッグから出したクッキー状のバランス栄養食を口に放り込み、美波はバイト先に向かう。

「毎日よく働くね」

 同じように水を飲みながら、沙希が美波の隣を歩く。

 ふたりは大学の近くにある大型スーパーの中のテナントで働いている。とはいえ、店舗は別だ。美波はフードコートのハンバーガーメインのファーストフード店、沙希は食品売り場の一角にあるケーキ店。

「沙希もじゃん」

「親がセレブじゃないもんでね」

 沙希が「へっ」と自虐的な笑いを漏らす。

「どこも一緒だよ」

 決してそうではないことはわかっているけど、お互いを慰めるために美波は沙希の肩を叩いた。

 平凡な家に生まれ、少しの友人と平凡な日々を過ごし、勉強だけは少し頑張って希望の大学に入った。

 勉強できる環境に恵まれただけありがたい。

 が、美波はふと考えてしまうのだ。