「やだよ、ずっと見てる。あたし、コースケを見てる。今までだってずっと見てたし、絶対に目を離さないから。まばたきだって片目ずつする。眠くなったらホッペつねって頑張るよ」

 ほら、片目ずつまばたきできるよ。

 ほらね。

 見てよ、康輔。

「おまえ、ウインク下手だよな」

 うん、下手だよ。

 悪い?

 涙があふれ出してくる。

 ぼやけて見えなくなっちゃうじゃん。

 康輔が見えなくなっちゃうじゃん。

 あたしは片目ずつ涙をぬぐった。

 でもどうしても康輔がぼやけていく。

「泣くなよ」

 康輔があたしを抱きしめてくれた。

 康輔しか見えない。

 なのに、康輔が見えない。

「やだよ。消えないでよ。あたし、ずっと見てた。コースケのことずっと見てたでしょ。いつも一緒だったし、ずっとそばにいたじゃん」

 あたしは康輔にしがみついた。

「あたし離さないから。ぎゅっと抱きしめていれば、コースケ、どこにも行けないでしょ」

 康輔の腕に力がこもる。

 なのに、康輔は見えない。

「あたし絶対忘れないからね。ずっとずっとコースケのこと恨んでやるんだから。あたしを一人にしたら、ずっとずっと恨んでやるんだから。だから、あたし、コースケのこと絶対忘れないんだからね。だから……、だから……」

「ごめんな」

 あたしも、ごめんね、康輔。

「笑ってくれよ」

 康輔の声が聞こえる。

「かさねの笑顔が俺の一番の宝物なんだからさ」

 うん。

 康輔、ありがとう。

 康輔、大好き。

 もっともっと伝えたいことがいっぱいあるのに、どうしてまたいなくなっちゃうのよ。