あたしはあわてて康輔の隣に並んだ。

「ねえ、コースケ、また会える?」

「さあな。たぶん会えるんじゃないかな」

「またいなくなったりしない?」

「いなくなったりしないさ。俺はここにいる」

 でも、それは、康輔のいない世界のここに、だよね。

「俺はいなくなったりしねえよ。おまえが笑ってるってことは、俺がいたってことだからな。おまえの笑顔が俺のいた証なんだよ」

 待ってるよ。

 あたし、ハチ公並みの忠犬になって、康輔のことずっと待ってるから。

 また、会えるよね。

 会えるんだよね。

 言わなくちゃ。

 狛犬のかたわらで立ち止まった康輔に、あたしは微笑みを向けた。

「いつも一緒にいてくれてありがとう」

「ありがとうな」と、康輔も微笑みを返してくれた。

「ありがとうって、何が?」

「一緒にいたことだよ」と、康輔が境内の木々に視線を流す。「俺がおまえのそばにいたってことは、おまえが俺のそばにいてくれたってことだろ」

 そうだね。

 いつも一緒だったよね。

 あたし、一人じゃなかったんだ。

 いつも二人一緒だったんだもんね。

 あたたかな気持ちがあたしの胸の奥からわき起こってきて、そっと勇気のかけらをわたしてくれる。

「好きだよ、コースケ。大好きだよ。あたし馬鹿だよね。わがままなくせして臆病で、ずっと好きって言えなくて、大事なときに黙ってばかりいて」

 ぽん、と康輔の手があたしの頭をなでる。

「素直だな、おまえ」

 うん。

 あたしはうつむいた。

「あたし、ひねくれてるけど、コースケの前だと素直になれるよ」

 だからね。

 あたしには康輔が必要なんだよ。

 ずっとそばにいてよ。

 康輔のことが大好きなんだから。

「おまえの思っていることが俺の思っていたことだよ」

 まっすぐにあたしを見つめる康輔の言葉が心の中に染みこんでくる。

 あたたかな気持ちがあたしを包み込む。

 その優しさに終わりが来るなんて、思ったことなんかなかったのに。

 康輔がイケメン狛犬の鼻をなでながらつぶやいた。

「ごめんな。俺、もう行かなくちゃ」

 やだよ。

 どこに?

 ここにいるっていったじゃん。

「ここにはいるけど、おまえのそばにはいられないんだ」

「え、じゃあ……」

「見えなくなったら、俺は消えるよ」

 やだよ。

 消えちゃだめだよ。