康輔が本殿を指さす。

「なあ、じゃんけんで勝った分だけ進めるゲームで、あそこまで行こうぜ」

「うん、いいよ」

 あたしはこの展開を知っている。

 ジャンケンポン!

 あたしがパーで康輔がチョキ。

 予想通りだ。

 微笑みながら指折り数えて前に進む。

「チョ・コ・レー・ト」

 四歩先で康輔が振り向く。

 あはは。

 康輔だ。

 本物の康輔だ。

 二回戦はあたしがチョキで康輔がパー。

 思った通りの展開だ。

「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」

 思いっきり歩幅を広げて前へ出る。

 参道がトランポリンになったみたいだ。

 今なら羽が生えて飛んでいけそうな気がする。

 二人の影が細く長くまっすぐに伸びている。

 夕日に照らされた康輔と向き合う。

 どうしてそんなに笑顔がまぶしいの。

「元気だな、おまえ」

「ほら、次の勝負」

 次は康輔がパーであたしがグー。

「パ・イ・ナ・ポ・ウ」

 少しだけあたしの前に出たネイティブ康輔が振り向く。

「よーし、ジャンケン……」

 あれ、なんかこの前と違う?

『あんまり差がつかないな』って言わないの?

 ま、いいか。

 あたしは康輔のかけ声に合わせて手を出した。

 今度はあたしがパーで康輔がグーだ。

「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル」

 軽やかな足取りで、康輔を追い抜く。

 振り向くと、やっぱりだいぶ差がついていた。

「やべえな。結構差がついたか」

 康輔が、すぐにジャンケンポンと勢いよくグーを出した。

 なんか知ってる展開と違う。

 一瞬戸惑ってしまって、あたしはチョキを出してしまった。

「なんだよ。おまえ、後出しのくせに負けてるじゃんか」

「いいでしょ。ほら、進みなよ」

「『グ』は何だっけ」

「ふつうは『グリコのオマケ』だよね」

「グリコの……何? 長いな」

 そうでもないと思うけどな。

「『グ』で始まる言葉なんてなんかあったっけか」

 急に言われても『グラタン』しか思い浮かばない。