好きかと聞かれれば嫌いではない。

 まあ、正直、好きではあるけど、でも、そういう好きじゃないと思っていた。

 クリスマスにコクったり、バレンタインにわざわざチョコを溶かして固め直した物を義理だから勘違いしないでとか渡したこともない。

『かさねって、八重樫君のことが好きなんでしょ』

 中学の時に女子の友達からよくからかわれた。

 でも、正直、康輔のことをそういうふうに見たことはなかった。

 そういう『好き』って、もっとドキドキするんじゃないかと思っていた。

 サッカー部の男子が好きだった友達なんかは、目が合うどころか、遠くからでも気配を感じただけで体が熱くなるとか言ってた。

 康輔にそんな気持ちを感じたことはない。

 あいつの気配なんて、すぐ後ろにいたって分からないことがある。

 だからたぶん恋じゃないと思っていた。

 あたしもそんな素敵な相手がいればいいなと思ってたけど、中学のときにはそんな男子はいなかった。

 康輔とはなんとなくしゃべるようになっていた。

 何がきっかけだったかすら覚えていない。

 中学に入学して、同じクラスになって、たまたま席が近かったんだっけ?

 ……違うか。

 なんだったんだろう。

 マジで思い出せない。

 いくら三年前のことだからって、なんか康輔に悪いような気がしてきた。

 康輔とは中学の三年間ずっと同じクラスだった。

 仲がいいのは確かだ。

 そもそも今だって同じ高校に通っているわけだし、そのためにお互いの家にお邪魔して一緒に受験勉強をしていたし、康輔のお母さんにもかわいがってもらってたし、自分の家みたいにくつろいでいた。

 むしろ、女子の友達の家に行くときの方が、お菓子を持って行った方がいいかなとか気をつかってたんじゃないかな。

 ただカレシだと思ったことはなかった。

 向こうだってあたしのことをカノジョだなんて思ってないと思う。

『でも、ふつう、男子の家なんか行かないよ』

 あたしが否定するほど、中学の同級生には笑われた。

 逆に、そういうふうに意識してなかったからなんじゃないかな。

 していたら行けないよね。

 多分そうだと思う。