石畳の参道を歩く革靴の足音が近づいてきた。
なんとなくミホと離れて背筋を伸ばす。
お互い顔を見合わせてしまった。
はっきり表情が分かるとちょっと照れくさい。
でも、恥ずかしがることはない。
大事な友達の大切な気持ちを受け止めたんだから。
背中の方でガラガラと鈴が鳴り、柏手を打つ音が静寂な境内に響く。
邪魔になるといけないかと思って、あたしたちは立ち上がって本殿から離れようとした。
お参りに来ていたのはうちの高校の生徒だった。
黄色い斜光に照らされて明るめのセミロングヘアが燃え上がるように輝いている。
息をのむような美しさだった。
あたしはこの人を知っている。
「鷹宮先輩」
思わず呼びかけてしまった。
先輩は目を開けて一瞬あたりを見回してからあたしの方を見た。
会釈すると、軽くうなずいてくれたけど、警戒するような表情を崩さなかった。
当惑気味なのももっともだ。
向こうは、同じ制服を着ていること以外、あたしのことを知らないのだから。
話しかけては見たものの、あたしも何から話せばいいのか分からなかった。
「先輩は成田から通っているんですよね」
「うん、そうだけど。どうして知ってるの?」
「十月初めに定期券を落としましたよね」
驚きの表情が浮かぶ。
「もしかして、あなたが拾ってくれたの? ええと……」
「あ、調理科の西谷って言います」
先輩はこちらに歩み寄りながら手を差し伸べてきた。
「西谷さんって、あの事故の? もう大丈夫なの?」
「はい、体はなんともありません」
「よかった。拾ってくれたの西谷さんだったのね。ありがとうね」と、あたしの手を握って微笑んでくれる。「ずっとお礼が言いたかったんだけど、誰だか分からなくてね。会わせてくださいって、ここでよくお参りしてたのよ。願いがかなって良かった」
先輩の笑顔はとても柔和だ。
康輔に会ったらきっと、あたしもこんな顔するんだろうな。
「あの、ええと……」
どうやって説明したらいいのか分からなくて言葉に詰まる。
康輔のことを言ってもいいんだろうか。
「拾ったのはあたしの……知り合いで。その……」
だめだ、うまく言えない。
なんとなくミホと離れて背筋を伸ばす。
お互い顔を見合わせてしまった。
はっきり表情が分かるとちょっと照れくさい。
でも、恥ずかしがることはない。
大事な友達の大切な気持ちを受け止めたんだから。
背中の方でガラガラと鈴が鳴り、柏手を打つ音が静寂な境内に響く。
邪魔になるといけないかと思って、あたしたちは立ち上がって本殿から離れようとした。
お参りに来ていたのはうちの高校の生徒だった。
黄色い斜光に照らされて明るめのセミロングヘアが燃え上がるように輝いている。
息をのむような美しさだった。
あたしはこの人を知っている。
「鷹宮先輩」
思わず呼びかけてしまった。
先輩は目を開けて一瞬あたりを見回してからあたしの方を見た。
会釈すると、軽くうなずいてくれたけど、警戒するような表情を崩さなかった。
当惑気味なのももっともだ。
向こうは、同じ制服を着ていること以外、あたしのことを知らないのだから。
話しかけては見たものの、あたしも何から話せばいいのか分からなかった。
「先輩は成田から通っているんですよね」
「うん、そうだけど。どうして知ってるの?」
「十月初めに定期券を落としましたよね」
驚きの表情が浮かぶ。
「もしかして、あなたが拾ってくれたの? ええと……」
「あ、調理科の西谷って言います」
先輩はこちらに歩み寄りながら手を差し伸べてきた。
「西谷さんって、あの事故の? もう大丈夫なの?」
「はい、体はなんともありません」
「よかった。拾ってくれたの西谷さんだったのね。ありがとうね」と、あたしの手を握って微笑んでくれる。「ずっとお礼が言いたかったんだけど、誰だか分からなくてね。会わせてくださいって、ここでよくお参りしてたのよ。願いがかなって良かった」
先輩の笑顔はとても柔和だ。
康輔に会ったらきっと、あたしもこんな顔するんだろうな。
「あの、ええと……」
どうやって説明したらいいのか分からなくて言葉に詰まる。
康輔のことを言ってもいいんだろうか。
「拾ったのはあたしの……知り合いで。その……」
だめだ、うまく言えない。