ミホが私の手を引いて人目のない神社の奥の方に連れていってくれる。

 本殿脇の石段に腰掛ける。

 肩が触れ合う。

 ミホがあたしの頭に頭を寄せてくる。

「あのさ、私だって、こわいんだよ。出しゃばってよけいなお節介して嫌われたらいやだもん」

 そんなことないよ。

 お節介じゃないよ。

 でもまた、涙のせいで声にならない。

「よけいなお世話だったらいやだし、無理をさせてかえって心の傷を深くしちゃうかもしれないでしょ。だけど、絶対悩んでるってわかってる友達を放っておけないでしょ」

 何か言わなくちゃって焦る。

 焦れば焦るほど声が震えてかすれてしまう。

 ミホがそんなだめなあたしを抱きしめてくれた。

「私だってね、困っている友達を見捨てられるほど冷たくもないんだよ」

「ありがとう。ごめんね。でも、ありがとう」

 ミホがうなずいてくれる。

 言えることを伝えなくちゃいけない。

 言いたいことがあるってことだけでも伝えなくちゃいけない。

 どこかで鳥が鳴いている。

 二人並んで座り直す。

 秋の日差しが真横からあたし達を照らす。

 世界が黄色く染まっていく。

「中学の時にね、友達にアドバイスしたらさ、上から目線でウザいって言われちゃったことがあってね」

 ミホが思いがけないことをつぶやきはじめた。

「クラスから浮いちゃって、学校行けなくなっちゃってさ。で、中三の夏休み明けに、おばあちゃんのところに私だけ引っ越してきたのよ。知ってる人のいない高校に行こうと思ってさ」

「え、そうだったの?」

「うん、元々親とは茨城の土浦ってところに住んでてね。霞ヶ浦っていう湖の隣」

 全然知らなかった。

「うちのおじいちゃんおばあちゃんさ、和菓子屋だから、よその地域で高校に通うのに調理科があると都合がいいかなと思ったんだ。べつにそっち方面の仕事につくつもりはなかったんだけどね」

 あたしと同じで、将来の目標がないっていうのはそういう理由だったのか。

 目標がないのは同じでも、あたしみたいないい加減な理由とは全然違うよね。

 今までゆるい同類だと思っていたのがめっちゃ恥ずかしい。

 ミホはちょっとうつむきながらふっと笑みを浮かべた。

「でも、この高校に来てさ、かさねに会えたから良かったよ」

 あらためて言われると照れてしまう。

「だから、かさねに怒鳴られたときによけいにこわくなっちゃってさ」

「ごめんね」

 それからミホは中学の時のことを話してくれた。