「つらいことがあるんでしょ」

 ますます力がこもる。

「言いなよ。言いたいこと。私、聞くよ。かさねの話ならなんでも聞くよ。ちゃんと言ってよ。友達でしょ」

「痛い、痛い……。言います」

 マジで痛いんだけど。

 ようやくミホが手を離してくれた。

「頑固だよ、かさねは。ほんと、こうでもしないと言わないんだから」

「ごめん」

 あたしは今朝言えなかったことをちゃんと言った。

「今朝は怒鳴ったりしてごめんね」

 うん、いいよ、とミホがあたしの手を握ってくれる。

「かさねって態度が強気なくせに中身は弱虫で見栄っ張りだよね」

 うん、その通りだよね。

 ごめんね。

「謝りたいんだろうなっていうのは分かってたけど、なんか甘やかせちゃうのもしゃくだと思ったから、せめて追いかけてこいよって逃げてみた」

 全部お見通しか。

「優しいね、ミホは」

「でしょ。だからさ、なんでも言ってよ。なんでも話してよ。聞きたいことがあるなら遠慮なく聞いてよ」

「うん、ありがとう」

「私は絶対にかさねのことを変だとは思わないから。何か私の理解できないことで困ってるんだろうけど、それを嘘とか作り話とは思わないから」

 うん、ありがとう。

 ほんとうに、ありがとう。

「ねえ、かさね。泣きたいときは泣けばいいし、叫びたいときは口をふさぐ必要なんかないでしょ。少なくとも私の前では」

 胸の奥がトクンと跳ねた。

 声が出ない。

 でも、うなずく。

 出るのは涙ばかりだ。

 ミホがまたあたしの涙を拭いてくれる。

「かさねって、自分のことしか考えてないよね。私だってかさねが必要なんだよ。いつも自分だけだと思ってるでしょ」

 友達の言葉が痛い。

「頑張れって言うのは、私、好きじゃないんだ。べつに私が何かしてあげられるわけじゃないし、結局相手がすることをただ見ているだけでしょう。それなのにただそう言うだけって、無責任だと思うんだ。でもね、かさねが何か大事なことをやろうとしてるってことは分かるよ。だから、応援してる。私は何もしてあげられないけど、うまくいくように祈ってるよ」