靴を履き替えて、すっかり葉の落ちた桜並木をなるべく早足で歩く。

 見回してもミホはいない。

 校門を出て勾玉神社へ続く一本道にも姿はなかった。

 どうして?

 どこに消えちゃったの?

 ねえ、ミホ、どこに行ったの?

 ねえ……。

 ミホまで消えたりしないよね。

 あたしは思わず駆けだしていた。

 体力がないからすぐに息が荒くなる。

 視点が揺れて気持ち悪い。

 だけど止まることはできなかった。

 ねえ、待ってよ。

 お願いだから言わせてよ。

 素直な気持ちを伝えたいから。

 ごめんね。

 もっとすぐに言うべきだったんだよね。

 あたしが悪いから謝るよ。

 だから、言わせてよ。

 勾玉神社まで来てしまったけど、ミホの姿はどこにも見当たらなかった。

 なんで?

 どうして?

 なんでみんないなくなっちゃうの?

 ミホまでいなくなることないじゃない。

 片方だけ残った狛犬様があたしを見ていた。

 ミホはどこですか?

 ミホに会わせてくださいよ。

 あたしは独り寂しげな狛犬様の鼻をなでながら祈った。

 言えなかったあたしが悪いのは分かってます。

 ちゃんと言わなかったあたしのせいです。

 お願いですから謝らせてください。

 ミホにまで見捨てられたかと思うと、あたしはもうどうしたらいいのか分からないんです。

 ……康輔。

 呼びかけると、優しい笑顔が思い浮かぶ。

 ねえ、つらいよ。

 悲しいよ。

 せつないよ。

 お願いだから助けて。

 このままじゃ、あたし、壊れちゃうよ。

 体の奥から震えだして、涙があふれだす。

 ミホ、ごめん。

 康輔、助けて。

 ひどいめまいに襲われて立っていられない。

 あたしはしゃがみ込みながら念じた。

 康輔、お願い。

 いるならあたしを助けて。

 頬を伝った涙が鼻の頭からボタボタと垂れていく。

 鼻がふさがって溺れたみたいに息が苦しい。

 口を開けて体の奥の寂しさを吐き出すように呼吸する。

 息をしようとすればするほど体が震えて涙があふれ出してくる。

 あたしはこのまま涙で溺れてしまえばいいんだと思った。

 あたしなんか、康輔みたいにいなくなってしまえばいいんだ。

 いなくなるのはあたしでよかったんだ。

 あたしなんか事故で死んじゃえばよかったんだ。