康輔との思い出はプツンと途切れてしまっている。

 いなくなった、というより、元からいなかったみたいだ。

 なんでそんなことになっちゃったんだろう。

 全然わけが分からない。

 急に胸の奥が冷えていく。

 考えてはいけないんだと警告されているみたいに、閉じたまぶたに浮かぶかすかな光が渦を巻き始める。

 めまいがしそうで、ギュッとまぶたに力を込める。

 体が熱くなってきて汗がにじみ出てくる。

 その汗が冷えてきて今度は体が震え出す。

 ねえ、康輔。

 助けて。

 お願いだから、ここにいるって言ってよ。

 馬鹿だなって笑ってよ。

 目を閉じたまま枕カバーで涙を拭う。

 濡れた枕の冷たさを耳たぶで感じる。

 自分の鼓動が耳の中で響く。

 ノイズ混じりの鼓動の向こうから康輔の声が聞こえてくる。

 いなくなるわけねえだろ。

 いつもそばにいたじゃんか。

 いつも一緒だっただろ。

 ……だよね。

 いつも一緒だったよね。

 明日、ちゃんと会えるよね。

 心配するなよ。

 うん。

 おやすみ、かさね。

 うん。

 ……おやすみ、康輔。

 ……。