そんなことを話しているうちに、話題が事故のことになった。

 ミホが声を抑えながらも、少し興奮気味に話してくれた。

「あの日、私と神社で別れて、その後だったんだよ。もうびっくりしたよ。まさかかさねが巻きこまれるとは思わなかったな」

 そうなのか。

 ミホまで巻きこまれなくてよかったな。

 ていうか、あたし、一人で何してたのかな。

 違うよね。

 一人のはずがないもん。

 だって、いつもあいつと一緒だったから。

「ねえ、コースケはどうしてるの?」

 あたしの質問に、ミホが耳を寄せてくる。

「え? 誰?」

「コースケだよ」

 当惑した表情で、ミホが自分の耳に手を当てる。

「え、ごめん。よくわからないや。ええと、もう一度言って」

「コースケ。知ってるでしょ。八重樫康輔」

 やえがし……こうすけ……、とつぶやいたミホの表情が曇る。

「ごめん。マジで分からないや。こうすけくん、だよね? うちらの高校? 中学じゃなくて?」

 え、なにそれ。

 コースケだよ。

 分からないってどうして?

 急になんだか嫌な予感がしてきた。

「ねえ、もしかして、何か隠してる?」

 あたしの言葉に驚いたようにミホが体を起こして両手を振った。

「いやいや、何もないよ。ていうか、本当に八重樫君って誰?」

 誰って……?

 どういうこと?

 何を言ってるの?

 ……まさか。

 体の奥が震える。

「ねえ、ミホ」とあたしは手を差し出した。

 ミホが優しく握ってくれる。

 友達の手はあたたかい。

「ねえ、本当のことを言ってよ」

 うん、とあたしの友達がうなずいた。

 でも、何も言ってくれない。

「コースケ、あたしと一緒に事故に巻きこまれてどうかしたの? もしかして……」

 ミホは返事に困っているようだった。

 あたしの手をさすりながらうつむいて言葉を探している。

 沈黙が流れる。

 教えてよ。

 ねえ、本当のことを教えてよ。

 あたしはミホの手を握り返した。

 教えてくれるまでは離さないからね。