指をパチンと鳴らしてあたしのおでこを指す。

「ニキビが消えますように、だろ」

 はあ?

 なによ、それ。

 全然分かってないじゃんか。

 でも思わず前髪で額を隠してしまった。

 なんだかほっとする。

 いいんじゃないかな。

 まだもう少しこのままで。

 何の進展もなく、お互いの気持ちをごまかし合いながら、でも、居心地の良い時間を過ごせるこの関係のままでいいんじゃないかな。

 甘え癖なんか、そんなに簡単には直らないよ。

「うん、そうだよ」とあたしは頬の筋肉をつり上げて笑みを向けた。「でも、願い事って他人に知られたらかなわないんだからね。このニキビ、ひどくなったら康輔のせいにするよ」

 いつもの調子でほっとする。

 あたし、これが好きなんだ。

 この居心地の良さが好きなんだ。

 ……でも。

 胸がトクンと弾む。

 大きく息を吸い込む。

 だめだめ。

 ちゃんと言うんでしょ。

 ミホと約束したじゃない。

 大切な友達との大事な約束だもん。

 ミホだって、あたしの背中を押すために、大事な友達だと思ってるってちゃんと言ってくれたんじゃん。

 言うよ。

 西谷かさね、言います。

「ねえ、コースケ」

「ん?」

「聞いて欲しいことがあるんだけど」

「おう、なんだよ」

「まじめに聞いてくれる?」

「俺はいつもまじめだぞ」

 うそこけ。

「ホントに? 笑ったりしない?」

「だから、何の話だよ」

「すごく大事でなくなったら困るもの」

「なんだよ、定期券でもなくしたのか?」

 今、それ言う?

「違うよ。なぞなぞじゃないよ」

 もう、それくらい察してよ。

 あたしは一度うつむいて、深く息を吸い込んだ。

 いい?

 言うよ。