狛犬の隣に立つ康輔の写真を撮る。

 画面をタップすると判定中の文字が出てグラフの色が変わっていく。

「ほら、九十九%だってよ。コースケは狛犬そっくりだよ。ていうか、そのものじゃん」

「んなわけないだろ。おまえ絶対なんかの設定いじっただろ」

 あたしのスマホを見つめながら文句を言う。

 顔は笑顔だ。

「してないよ、何も」

「なんかのパラメータ全振りしてるんじゃねえの。絶対課金とかしていじっただろ。でないと、狛犬MAXって、こんなウルトラレアみたいな数値出ねえだろ」

 なによそれ。

「やっぱりバチが当たらないように狛犬様にあやまっておきなよ」

 すると、しょうがねえなとぼやきながら康輔は狛犬に向かって吠え始めた。

「ワンワンッ!」

「何よ、急に」

「だってさ、犬だろ。人間の言葉で謝っても通じないじゃん。俺って意外と頭いいだろ」

「ふつう犬になりきる? プライドのかけらもないの?」

「こうなったら俺、ハチ公なみの忠犬になるぜ」

「渋谷駅前で正座してなよ」

「迎えに来てくれるか?」

「やだよ、遠いし。ここ千葉だもん」

 あたしの目の前にいつもの康輔がいる。

 いつでもどこでも、居心地の良い空気を運んできてくれるいつもの康輔だ。

 これでいいんじゃないのかな。

 このままでいいんじゃないのかな。

 ミホの顔が思い浮かぶ。

『かさねの思うようにしなよ』

 あたしの友達はいつだって優しい。

 あたしはいつもそれに甘えている。

 これからもそれでいいんじゃないの?

 ……いいの?

 それでいいの?

 分かんないよ。

 言った方がいいのかな。

 言っちゃってもいいのかな。

 この居心地の良い時間が終わったりしないかな。

 神様にお祈りすれば大丈夫かな。

 勾玉様にお願いしてみようかな。