北口の階段を駆け上がって改札口前に立つと、ちょうど南口の階段を上がって康輔もやってきたところだった。

「おはよ、コースケ」

「かさね、オッス」

 だるそうに軽く手を挙げた康輔に向かって、突進しながらハイタッチ。

 康輔はあたしよりも頭一つ背が高い。

 ちょうどいい高さでパチンと明るい音がした。

 ついでに、勢いにまかせて康輔にタックルする。

 全然びくともしない。

「おい、なんだよ」

「いいじゃん。今日から十月だよ」

「何かあるのか?」

「冬服だよ。どう?」

「上着着ただけじゃん」とつぶやきながら康輔が改札口に向かって歩き出す。
 それだけ?

 もう、つまんないの。

 胸の中をちょっと秋の風が吹き抜けたような気がした。

 あーあ、せっかくキンモクセイが咲いていたのにな。