そのまま一向におさまらない腹痛と戦っていると、男の人が戻って来て







「動けそうですか、?」


と私に手を差し伸べた。



私はその手を拝借して近くのベンチに座らせてもらい、男の人が買ってきてくれた薬を飲んだ。



「すいません…いくらでしたか?」


鞄から財布を出すと、男の人は


「大丈夫ですよ。…俺が好きでしたことなんで。」


と言い柔らかく微笑む。



それにつられて私も微笑むと男の人のポケットの携帯が着信を告げた。



「あっ、やべっ…忘れてたっ。」



携帯を開けると男の人はそう言って



「じゃあ、俺…そろそろ行きます。…お大事に。」



早足で歩き始めた。その後ろ姿に私は気づいたら声をかけていた。


「あのっ…お名前はなんていうんですかっ?」


我ながら、初対面の人に名前を聞くなんて…って思ったけど、男の人は振り向いて教えてくれた。


「慧です。」