「ふふふふふ…。」

「何ニヤニヤしてんの遥香。気持ち悪いことになってるわよ。」

次の日、朝からご機嫌で登校してきた私に眉をひそめるみっちゃん。


「ニヤニヤなんかしてないもーん。…ふふふふふ。」

一人で含み笑いをしている私は「…こりゃ、如月となんかあったな…。」って言ってるみっちゃんの声も聞こえない。


…慧くん。



…慧くんって呼んでいいって言われちゃった。



慧くんはこの学年でもいい意味でかなり浮いてる人だからファンの子はいっぱいいるものの、ほとんどの人が「如月くん」って呼んるしましてや本人に面と向かって「慧くん」って呼ぶ人なんてそうそういない。


…しかも!

私はご本人様直々に許可をもらったのだ…!!


こんなの朝からニヤニヤするのも仕方ない。


「あ、遥香の王子様来たよ。」

「だから王子様じゃないって。」

そう訂正してから私はやっぱり教室の入り口の方に目を向ける。


慧くんは今日もかったるい、という感じで歩いて席に着くとすぐに机に顔を伏せてしまった。


…へへ、今日も相変わらずだなぁ。


色素の薄いちょっとふわふわしてる慧くんの頭を見るだけで心がほんわかしてくる。


小学生のとき、道徳の時間で「平和とは何か。」という議題で話し合ったのがふと思い出された。


あのときは「戦争がないこと。」とかそれっぽいこと言って終わらせてたけど、私にとっての平和って今この時間かもしれない。


そんなことをぼんやりと考えていると上から「なぁ。」と声がふってくる。


顔を上げるとちょっと眉を寄せた慧くん。


「あんたこっち見すぎ。…視線が気になって寝れねえんだけど。」


「あっ…ごめん。」


見ていたことに気づかれていたことで恥ずかしさを覚えながらも謝ると、慧くんは席に戻っていった。