「しらゆきひめみたいにまっかなリボンをつけたいなあ」
「オーロラひめのこのドレス!あいちゃん、これかわいいね!」
「かみのけ、ピンクやきいろにしたら、ゆうもプリンセスになれるかな」
ゆうちゃんは花柄のワンピースを着る日はくるくると回って、プリンセスごっこをした。どこからか引っ張り出してきた浅葱色の風呂敷をヴェール代わりに、おもちゃのティアラで挟んでひらひらと揺らして踊ったり、ママの化粧台にある口紅をこっそり塗ったりして楽しんでいた。ただ、どんなにばれないように気を付けても、ゆうちゃんは口紅をきれいに塗ることができないから、はみだした真っ赤なそれで必ずママにばれて怒られていた。いつもニコニコしているゆうちゃんも可愛いけれど、怒られてメソメソ泣いているゆうちゃんも可愛いなんて言ったら、ゆうちゃんはぷんぷんと怒りだしてしまうかもしれないね。可愛いの一言も、ぼくは言えやしないんだけどね。

       ○

「いってきまーす!」
ゆうちゃんは小学生になってから、ぼく以外のともだちが沢山できた。前みたいに毎日、一日中一緒にいることは叶わなくなってしまったけれど、毎日元気に学校へ通うゆうちゃんを見るのも楽しかった。入学当初、ともだちが出来るか不安で泣いたり学校を嫌がっていたゆうちゃんが、楽しそうにその日の出来事をぼくに話してくれるのは嬉しいものなのだ。
この頃、ぼくはゆうちゃんのベッドの上で過ごすことが多くなった。ゆうちゃんが小学校に上がる時に、おじいちゃんとおばあちゃんにお祝いで買ってもらった勉強机には、キラキラのチャームが付いたペンや香りの付いた消しゴム、ともだちと交換したお手紙やぷっくりと膨らんだやわらかいシールなどが沢山置いてある。ゆうちゃんは、ピンク色のものばかり持っているから、どうやらピンクが好きみたいだ。それから、学校で流行っていると言っていた犬のキャラクターのグッズがいくつか飾ってある。「このキャラクター、あいちゃんに似てない?」と言われたが、ぼくの方がよっぽどきれいでよっぽど愛されているはずだ。だってぼくは、ゆうちゃんがブラッシングしてくれたり着飾ってくれるし、ゆうちゃんはぼくに何でも話してくれるのだ。