「一連の炎上事件は故意に行われたものだった。Shabetterのアカウントは、パスワードだけでも分かれば簡単に乗っ取れるから。被害者の篝火さんたちと交友のある御坊君なら、それが可能だよね?」
 御坊君を真っ直ぐ見据えながらわたしは、今までの調査で立てた推理を話していく。
 アカウントの乗っ取り方法から、RTによる拡散の手法、それから流出した個人情報。
 これらの推理を踏まえて犯行が可能なのは、被害者たちと現実で交友のある人間の可能性が高いと分かった。
 パスワードを物理的に盗み見るのも、間接的に割り出すもの、彼ならば可能だろう。
「御坊君は篝火さんと付き合ってたよね。それならSNSのアカウントの存在や、パスワードだって入手が可能じゃないかな? 篝火さんの飲酒画像はネット上にはアップされていなかったけど、物理的に携帯から直接コピーすることで御坊君は画像を手に入れた」
 しかしここまでの推理では、被害者たちと交友のある人間なら同じように容疑者になる。
 言ってしまえば、篝火さんたちと友人だった蒲公さんも疑うべき人物と言えるだろう。
「悪実が御坊君だと推理した根拠は三つ。Shabetterでのアカウント名、ID、そして学校に届いたメールのアドレス」
 だからここから犯人を絞り込むために必要なのは、三つの単語だった。
「まず悪実のアカウントに使われていたIDは、『Trachelospermum asiaticum0714』――chelospermum asiaticumはテイカカズラの学名。つまり定家葛、わたしを指している。数字の0714は七月十四日、これはわたしが学校に登校しなくなった日付……ここから推理して悪実は少なくとも、わたしのことを知っている人間だと予測できる」
 わたし自身の名前と、それに関連した日付。これを偶然と言う言葉では片付けられない。
 被害者たちがかつて、わたしをイジメていた人間なら尚更に。
「次に学校に届いたメールのアドレスに入ってた単語、『Trifolium repens』――これは白詰草の学名で、白詰草の別名はクローバー。こじつけかもしれないけど、クローバーは〝黒羽〟って読み替えれないかな?」
 少々強引かもしれないが、次のヒントで彼が悪実と言う仮説は補強することができる。