カズラから被害者たちの投稿の詳細の他に、篝火の投稿に使用されていた写真の出所を聞いて欲しいと頼まれていたのを思い出す。
「確か夏休み中に仲間内で集まった時の写真、って話だったな。特にSNSとかには投稿してなくて、篝火本人の携帯のメモリーの中にあるって蒲公は言ってたぞ」
「もしその話が本当だったとしたら、おかしくない?」
蒲公も最初に聞いた時は質問の意味に首を傾げていたが、篝火本人に確認してくれた。
だが俺にはカズラが、なにをおかしいと疑っているのか分からなかった。
「どうして〝篝火さんしか持っていないはずの写真〟をアカウントを乗っ取ったとは言え、第三者が手に入れていたのかな?」
「――!?」
カズラの言い分を聞いた瞬間、俺は自分の迂闊さを呪った。
なりすまし投稿に使われていた写真は、ほとんど別のSNSに投稿されていたものだ。
ならばアカウントさえ知っていれば、インターネット経由で画像を保存してそれを流用することができる。しかし篝火の写真の場合、それを持っているのは篝火本人だけだ。
それなのにどうして、乗っ取り犯がその写真を手に入れられるんだ?
「乗っ取り犯……悪実は篝火たちと面識があるのか?」
思い至った可能性を口にする。もはやそれしか考えられなかった。
悪実は何らかの手段で物理的に篝火の携帯から、問題の写真を手に入れたのだろう。
「その可能性は高いけど――具体的に誰か、までは分からないかな」
悪実が被害者たちと現実の知り合いである可能性は、これでより濃厚になっただろう。
しかし結局、まだ決定打とは言えない。あと一歩、もう少し根拠が固まれば――
「そう言えばこのアカウント名の横にある、@とアルファベットはなんなんだ?」
「それはアカウントのIDだね」
先程からアカウントの詳細が表示されていた際に、アカウント名の後ろに@とアルファベットが表示されているのが気になっていた。
カズラの説明によれば、それはアカウントのIDだったらしい。
「ちなみにカズラのIDは@love_love_brotherだよ」
「もうツッコまないぞ?」
カズラの言葉を軽く流して、俺は悪実のアカウントIDを見る。
「Trachelospermum asiaticum0714、か」
「見慣れない単語だね……ググってみようか」
お互いに見覚えのないアルファベットに首を傾げるが結局、その意味は分からない。
するとカズラは悪実のIDをコピーアンドペーストし、検索エンジンで検索をかけた。
「えーっと……花、の学名みたいだね」
とりあえず数字は除いてアルファベットだけで検索してみると、まず最初に花の画像が表示された。白い花弁が特徴的な花だが、いまいち見覚えはない。
「テイカカズラ、って植物みたいだね」
「聞いたことないな」
「…………」
検索結果の中からそれらしいページにアクセスすると、花の詳細が表示された。
カズラは最初こそ普通にページの内容を読み上げていたが、いつの間にかマウスを操作する手を止めて食い入るように画面を凝視していた。
「このテイカカズラ、って花……漢字で書くと、『定家葛』って書くみたい」
「えっ、それって――」
カズラが指を指す方を見て、俺は思わず息を飲んでしまう。
定家葛、それはカズラのフルネームとまったく同じ名前だった。
どうしてここで、カズラに関する情報が出てくるのだろうか?
「待って……後ろの0714がもし、日付だとしたら……」
真剣な表情でぶつぶつと呟きを漏らすカズラ。
その様子はまるで、記憶の海から一筋の光明を手繰り寄せているようにも見える。
「この、日付って――」
一つの解答に思い至ったのか、カズラはポツリと呟きを漏らした。
その顔を支配しているのは確かな驚愕で、自身も信じられないとでも思ってるようだ。
「カズラが学校に行かなくなった日……わたしが引きこもり始めた日、だと思う」
「確か夏休み中に仲間内で集まった時の写真、って話だったな。特にSNSとかには投稿してなくて、篝火本人の携帯のメモリーの中にあるって蒲公は言ってたぞ」
「もしその話が本当だったとしたら、おかしくない?」
蒲公も最初に聞いた時は質問の意味に首を傾げていたが、篝火本人に確認してくれた。
だが俺にはカズラが、なにをおかしいと疑っているのか分からなかった。
「どうして〝篝火さんしか持っていないはずの写真〟をアカウントを乗っ取ったとは言え、第三者が手に入れていたのかな?」
「――!?」
カズラの言い分を聞いた瞬間、俺は自分の迂闊さを呪った。
なりすまし投稿に使われていた写真は、ほとんど別のSNSに投稿されていたものだ。
ならばアカウントさえ知っていれば、インターネット経由で画像を保存してそれを流用することができる。しかし篝火の写真の場合、それを持っているのは篝火本人だけだ。
それなのにどうして、乗っ取り犯がその写真を手に入れられるんだ?
「乗っ取り犯……悪実は篝火たちと面識があるのか?」
思い至った可能性を口にする。もはやそれしか考えられなかった。
悪実は何らかの手段で物理的に篝火の携帯から、問題の写真を手に入れたのだろう。
「その可能性は高いけど――具体的に誰か、までは分からないかな」
悪実が被害者たちと現実の知り合いである可能性は、これでより濃厚になっただろう。
しかし結局、まだ決定打とは言えない。あと一歩、もう少し根拠が固まれば――
「そう言えばこのアカウント名の横にある、@とアルファベットはなんなんだ?」
「それはアカウントのIDだね」
先程からアカウントの詳細が表示されていた際に、アカウント名の後ろに@とアルファベットが表示されているのが気になっていた。
カズラの説明によれば、それはアカウントのIDだったらしい。
「ちなみにカズラのIDは@love_love_brotherだよ」
「もうツッコまないぞ?」
カズラの言葉を軽く流して、俺は悪実のアカウントIDを見る。
「Trachelospermum asiaticum0714、か」
「見慣れない単語だね……ググってみようか」
お互いに見覚えのないアルファベットに首を傾げるが結局、その意味は分からない。
するとカズラは悪実のIDをコピーアンドペーストし、検索エンジンで検索をかけた。
「えーっと……花、の学名みたいだね」
とりあえず数字は除いてアルファベットだけで検索してみると、まず最初に花の画像が表示された。白い花弁が特徴的な花だが、いまいち見覚えはない。
「テイカカズラ、って植物みたいだね」
「聞いたことないな」
「…………」
検索結果の中からそれらしいページにアクセスすると、花の詳細が表示された。
カズラは最初こそ普通にページの内容を読み上げていたが、いつの間にかマウスを操作する手を止めて食い入るように画面を凝視していた。
「このテイカカズラ、って花……漢字で書くと、『定家葛』って書くみたい」
「えっ、それって――」
カズラが指を指す方を見て、俺は思わず息を飲んでしまう。
定家葛、それはカズラのフルネームとまったく同じ名前だった。
どうしてここで、カズラに関する情報が出てくるのだろうか?
「待って……後ろの0714がもし、日付だとしたら……」
真剣な表情でぶつぶつと呟きを漏らすカズラ。
その様子はまるで、記憶の海から一筋の光明を手繰り寄せているようにも見える。
「この、日付って――」
一つの解答に思い至ったのか、カズラはポツリと呟きを漏らした。
その顔を支配しているのは確かな驚愕で、自身も信じられないとでも思ってるようだ。
「カズラが学校に行かなくなった日……わたしが引きこもり始めた日、だと思う」