「だってホラ、この人たちのホーム画面を見てみなよ」
 表示された悪実のフォロワー、そのアカウントの一つをカズラはクリックして表示する。
 するとそこには、今回の件と同じような炎上投稿が大量にRTされていた。
「……つまり、こいつらは〝そういうネタ〟が大好物ってわけか」
 ホーム画面を遡っていくと、次々と炎上した投稿のRTが表示されていた。
 中にはRTした投稿に対して『「さっきのアカウントはまだ高校生らしいので、あまり拡散しないであげてね!』や『彼の通う学校の電話番号です! みんなで電凸しようぜ!』、『○○大学法学部の○○○君が公園の水道の蛇口を尻に突っ込む画像をShabetterに投稿して炎上→公然わいせつ罪で逮捕間近に!!』などと面白おかしく囃し立てていた。
「やった張本人に同情はしねぇが、こうやって他人をなじって楽しんでるヤツも最低だな」
 思わず吐き捨てるように口にしてしまう。それ程に悪実をフォローしている人間は、例外なく他人の不幸や破滅を格好の笑いの種にして愉しんでいるヤツらばかりだった。
 こいつらの前に犯罪を主張するような投稿をRTするのは、飢えた獣の前に餌を投げやることに等しい。確実にRTさせて投稿を拡散したい場合、最高の相手とも言える。
「この悪実って人は、こう言う人間を選んでフォローしてたんだろうね。この手の人間は、自分をフォローしたアカウントはフォローを返すタイプが多いしね」
「この手の情報が好きなら、アンテナは広く張ってた方が好都合だろうしな」
 よく見てみればどのアカウントも、フォロワー数の倍以上のフォローをしている。
 手当たり次第、面白おかしい情報を収集していることは容易に想像がつく。
「でもこの悪実って、いったい何者なんだ?」
 被害者たちの投稿が確実に炎上までに至る手法は、カズラによって解明された。
 しかし今回の事件はそれだけでは解決しない。
「推理小説で言う、フーダニットだね」
「フーダニット?」
「推理小説で重視される三要素の一つだよ。フーダニット、犯人は誰なのか? ハウダニット、どのように犯罪を成し遂げたのか? ホワイダニット、なぜ犯行に至ったのか? まあ、簡単に言えば、〝犯人〟、〝犯行方法〟、〝動機〟の三要素だね。今回の場合、犯行方法はだいたい分かったから、突き止めたいのはフーダニット――誰が犯人か、だね」