ページの最下部、つまり一番最初にRTしたのアカウントには見覚えのある名前がある。
「それじゃ、雪ノ下さんやあとの二人も表示してみようか」
 同じ操作を他の投稿にも行っていくと、全ての投稿に対してのRT順が表示された。
 篝火、月下部、雪ノ下、永翁、錦木、全てのRT欄で最下部に表示されているアカウント名――そこには全て、『悪実』の名前が表示されていた。
「偶然……って、わけじゃないよな?」
 今、画面上に表示されている情報を信じるとすれば、問題となっている投稿を全てまず最初にRTしたのは同一のアカウントと言うことになる。
 これを偶然と判断するのには、少し無理があるような気がしてしまう。
「でもこのアカウント、フォロワーが二十人もいないぞ。拡散力で言ったら大したことないんじゃないか?」
 悪実のアカウントをクリックすると、そこにはフォロー四十/フォロワー二十と表記されていた。つまり悪実がRTしたとしても、たった二十人のフォロワーにしか拡散ができないことになる。
「そうだね。確かに数字で見れば、大したことない数だと思うよ。でも数だけで簡単に判断できないのが、Shabetterの怖いところなんだよ」
 俺の言葉を否定するように言うと、カズラは悪実のフォロワーを一人一人確認していく。
「この人をフォローしてる人って、フォロワーが千以上いる人ばっかりだね」
「って言うことは……そいつらがRTすれば、一気に千人以上の目につくってことか?」
 例え自分のフォロワーが少なくても、自分をフォローしてくれている人間が多くのフォロワーを有していれば、RTは爆発的に拡散していくことが可能だ。
 しかし、そこで疑問に思う点もあった。
「でも自分のフォロワーが、自分のRTを更に拡散してくれる保証なんてないだろ?」
 あくまで先程の考えは、素直にフォロワーがRTしてくれた場合の話になる。
 もし自分がRTしても興味を持ってもらえずに、無視されてしまえばそれまでだ。
 下手な鉄砲もではないが二十人のフォロワーの内、誰かがRTしてくれるだろうと言う希望的観測で、被害者五人を全て炎上させることは可能なのだろうか?
「ううん。二十人のフォロワーの内、大半の人間は間違いなくRTをすると思うよ」
 だけどカズラは一瞬の迷いも見せずに、俺の懸念をばっさりと両断する。