◇炎上の仕掛け人
「ここまではShabetterの仕様とか、炎上のメカニズムについて話してきたけど……これからまず、やらなきゃいけないことがあるよね」
ひとまず説明は終わり、とカズラは息をついて話を切り替えていく。
「この一連の事件が人為的な物か――悪意を持った誰かによって引き起こされたのか、それを突き止める必要があると思うんだ」
それはつまり、ここまでの炎上事件を引き起こした犯人が実在するのか。その一点だ。
「さっきの話を聞く限り、例えアカウントを乗っ取ったって、一人で炎上させるのは難しいんじゃないか?」
カズラの説明を聞く限り、原則的に自分がした投稿を自分でRTすることはできない。
つまりアカウントを乗っ取っても、自主的に投稿を拡散することはできないのだ。
乗っ取った人間が別個に自分のアカウントを持っていたとしても、そこまで上手く狙い通りに炎上してくれるものなのだろうか。
「確かに他人頼りの要素が多いRTを、狙い通りに働かせるのは難しいかもね」
「カズラみたいにフォロワーが多いアカウントだったら簡単だろうけど、普通の人間じゃそこまでフォロワーがいないだろうし」
同じRTでも開始時のフォロワーが十と万では、比べようもないくらい拡散力が違う。
五人の内の誰かともなれば運が良ければ可能かもしれないが、今回は五人全員が例外なく炎上の被害者となっている。そこにはおそらく、なにか確実性のある〝手法〟があるはずだ。
「とりあえず一旦、乗っ取りのことは置いておこうか。まずはどうやって確実に炎上まで持っていったか、その点について考えてみるね」
しかしその手法とやらは、どんなに考えてみても一向に思いつかない。
そんな俺を見てカズラは、人差し指をぴんと立てて一つの提案をした。
「そこで気になったことが一つ」
乗っ取り犯の有無と言う点から、いかにして確実に炎上まで取り付けたか。
まずはその点について、カズラは推理を始めることにしたらしい。
「とりあえず、問題になってる炎上した投稿を表示してみるね」
カズラは軽快にマウスとキーボードを操作して、件の炎上の原因となった投稿を画面上へと表示させた。
「バラツキはあるけど、最高は一万リツイートか……」
投稿の詳細を見てみるとそこには、一万を越えるRTの数が表示されている。
これはあくまで純粋なRT数なので、これを目にした人間はそれより遙かに多いはずだ。
「ここで注目してもらいたいのは、RTの順番なんだよ」
「順番?」
「このRT数の欄をクリックすると、どんなアカウントがRTをしたか表示されるの。下に行けば行く程、古い順番だから……一番下に表示されるのが、この投稿を最初にRTしたアカウントになるね」
RTの順番に注目して欲しい。そう言うとカズラはRT数が表示されている箇所をクリックし、すると別のページでこの投稿をRTしたアカウントの一覧が表示された。
流石に一万を越える数ともなればその量も膨大で、カズラがページの一番下に辿り着くまでそれなりの時間を要した。
「これが篝火さんの投稿を最初にRTしたアカウントだね」
「悪実(あくじつ)……? これがアカウント名か?」
一番下に表示されたアカウント、つまり最初にRTしたアカウントが表示される。
悪実、と言う名前がアカウント名なのだろうか。見ない単語だが、ハンドルネームに大した意味はないことが多いので、考えるだけ無駄か。カズラの例もあるし。
「次に月下部さんの投稿のRT順を表示するね」
俺が首を傾げている間に、カズラは同様の操作をして月下部の投稿のRT欄を開く。
「……また同じヤツ、だよな?」
「ここまではShabetterの仕様とか、炎上のメカニズムについて話してきたけど……これからまず、やらなきゃいけないことがあるよね」
ひとまず説明は終わり、とカズラは息をついて話を切り替えていく。
「この一連の事件が人為的な物か――悪意を持った誰かによって引き起こされたのか、それを突き止める必要があると思うんだ」
それはつまり、ここまでの炎上事件を引き起こした犯人が実在するのか。その一点だ。
「さっきの話を聞く限り、例えアカウントを乗っ取ったって、一人で炎上させるのは難しいんじゃないか?」
カズラの説明を聞く限り、原則的に自分がした投稿を自分でRTすることはできない。
つまりアカウントを乗っ取っても、自主的に投稿を拡散することはできないのだ。
乗っ取った人間が別個に自分のアカウントを持っていたとしても、そこまで上手く狙い通りに炎上してくれるものなのだろうか。
「確かに他人頼りの要素が多いRTを、狙い通りに働かせるのは難しいかもね」
「カズラみたいにフォロワーが多いアカウントだったら簡単だろうけど、普通の人間じゃそこまでフォロワーがいないだろうし」
同じRTでも開始時のフォロワーが十と万では、比べようもないくらい拡散力が違う。
五人の内の誰かともなれば運が良ければ可能かもしれないが、今回は五人全員が例外なく炎上の被害者となっている。そこにはおそらく、なにか確実性のある〝手法〟があるはずだ。
「とりあえず一旦、乗っ取りのことは置いておこうか。まずはどうやって確実に炎上まで持っていったか、その点について考えてみるね」
しかしその手法とやらは、どんなに考えてみても一向に思いつかない。
そんな俺を見てカズラは、人差し指をぴんと立てて一つの提案をした。
「そこで気になったことが一つ」
乗っ取り犯の有無と言う点から、いかにして確実に炎上まで取り付けたか。
まずはその点について、カズラは推理を始めることにしたらしい。
「とりあえず、問題になってる炎上した投稿を表示してみるね」
カズラは軽快にマウスとキーボードを操作して、件の炎上の原因となった投稿を画面上へと表示させた。
「バラツキはあるけど、最高は一万リツイートか……」
投稿の詳細を見てみるとそこには、一万を越えるRTの数が表示されている。
これはあくまで純粋なRT数なので、これを目にした人間はそれより遙かに多いはずだ。
「ここで注目してもらいたいのは、RTの順番なんだよ」
「順番?」
「このRT数の欄をクリックすると、どんなアカウントがRTをしたか表示されるの。下に行けば行く程、古い順番だから……一番下に表示されるのが、この投稿を最初にRTしたアカウントになるね」
RTの順番に注目して欲しい。そう言うとカズラはRT数が表示されている箇所をクリックし、すると別のページでこの投稿をRTしたアカウントの一覧が表示された。
流石に一万を越える数ともなればその量も膨大で、カズラがページの一番下に辿り着くまでそれなりの時間を要した。
「これが篝火さんの投稿を最初にRTしたアカウントだね」
「悪実(あくじつ)……? これがアカウント名か?」
一番下に表示されたアカウント、つまり最初にRTしたアカウントが表示される。
悪実、と言う名前がアカウント名なのだろうか。見ない単語だが、ハンドルネームに大した意味はないことが多いので、考えるだけ無駄か。カズラの例もあるし。
「次に月下部さんの投稿のRT順を表示するね」
俺が首を傾げている間に、カズラは同様の操作をして月下部の投稿のRT欄を開く。
「……また同じヤツ、だよな?」