「…………」
俺はいつだってカズラの味方だった。理由を問われれば迷ってしまうが、世界に一人だけである大切な妹を守ってやりたい、と言う気持ちに大層な理由は要らないだろう。
ただ一言あればいい。『俺はカズラのことが大好きだから』それ以上の理由は不要だ。
「……何だか、中二っぽい発言だね」
「――ッ~!? ば、馬鹿野郎……茶化すんじゃねぇよ……」
くすり、と小さく笑うカズラ。対照的に俺は、しどろもどろなって赤面する。
至極真面目な話をしていたのに、そんな返しをされては思わずたじろいでしまう。
「そっか……うん、そっか。お兄ちゃんは昔からそうだったよね」
くすくすとさも楽しげに笑いながらカズラは頷く。
まるで俺の言葉を一つ一つ噛み締めるように、うんうんと頷いている。
――握っていた手から、もう震えは消えていた。
「もし、わたしが――〝カズラ〟がどんな人間でも、お兄ちゃんは味方で居てくれるの?」
「ああ」
そしてカズラはこれまで通りの口調で、俺に対して問いかけてくる。
俺はその問いに対して、平然と頷いてみせた。
「超能力者でも?」
「ああ」
「異能者でも?」
「違いが分からん」
「実は魔術協会から派遣された魔術師でも?」
「問題ない」
「前世は魔王だったとしても?」
「現世では俺の妹だ」
「世界の命運を握る、選ばれし戦士だとしても?」
「解説役ないし、サポートなら任せろ」
「わたしがお兄ちゃんのことを性的に見てても?」
「……ぜ、善処する」
矢継ぎ早に投げかけられる質問へ、俺も次々と答える。
どんな突拍子がない想定も、今の俺には微々たる問題だ。……最後の質問以外は。
「……じゃあ、こんな情けない妹でも、お兄ちゃんは好きでいてくれるの?」
「ああ。世界で一番、愛してるぞ」
最後に間を置いておそるおそる尋ねられると、思わずフッと笑みを零して答えた。
「でも情けない、なんて言うな。俺はお前のそういうところが好きなんだから。だから例え本人でも、俺の大事な妹を貶めるようなことは言わないでくれ」
そして諭すように、言葉を付け加える。俺はカズラの良いところをたくさん知っている。
きっと本人からすれば欠点に思えることでさえも、俺にとっては愛おしく感じてしまう。
だからこそ定家葛と言う人間を、例え本人の口からでも否定はして欲しくなかった。
「……うん、分かった。ありがとう、お兄ちゃん。カズラもどんなことがあっても、お兄ちゃんのことを信じる」
カズラは泣き笑いのような表情を浮かべて、言葉を漏らした。
しかしその顔には先程までの悲哀ではなく、確かな喜びや嬉しさといった感情があった。
「その代わり、お前の気持ちも聞かせてくれ。なにを思ってどう考えるのか、本当の気持ちを教えて欲しいんだ。もう同じ失敗はしたくない。世界で一番、カズラのことを分かってやれるようになりたいんだ」
二度と同じ過ちを犯さないために、俺はカズラに対して一つのお願いをした。
これから気兼ねなく本当の気持ちを打ち明けて欲しい、と。
それができるだけの信頼関係を今、俺たちは築くことができたのだから。
「うん……カズラもお兄ちゃんには、正直に話すよ」
カズラもその言葉に対して、弾けるような笑顔を浮かべて答えた。
そして万感の思いを込めて、まるで満開の桜を連想させるような笑顔で言ったのだった。
「お兄ちゃん、大好きだよ」
その顔は本当に久々に見た、心からの笑顔だった。
俺はいつだってカズラの味方だった。理由を問われれば迷ってしまうが、世界に一人だけである大切な妹を守ってやりたい、と言う気持ちに大層な理由は要らないだろう。
ただ一言あればいい。『俺はカズラのことが大好きだから』それ以上の理由は不要だ。
「……何だか、中二っぽい発言だね」
「――ッ~!? ば、馬鹿野郎……茶化すんじゃねぇよ……」
くすり、と小さく笑うカズラ。対照的に俺は、しどろもどろなって赤面する。
至極真面目な話をしていたのに、そんな返しをされては思わずたじろいでしまう。
「そっか……うん、そっか。お兄ちゃんは昔からそうだったよね」
くすくすとさも楽しげに笑いながらカズラは頷く。
まるで俺の言葉を一つ一つ噛み締めるように、うんうんと頷いている。
――握っていた手から、もう震えは消えていた。
「もし、わたしが――〝カズラ〟がどんな人間でも、お兄ちゃんは味方で居てくれるの?」
「ああ」
そしてカズラはこれまで通りの口調で、俺に対して問いかけてくる。
俺はその問いに対して、平然と頷いてみせた。
「超能力者でも?」
「ああ」
「異能者でも?」
「違いが分からん」
「実は魔術協会から派遣された魔術師でも?」
「問題ない」
「前世は魔王だったとしても?」
「現世では俺の妹だ」
「世界の命運を握る、選ばれし戦士だとしても?」
「解説役ないし、サポートなら任せろ」
「わたしがお兄ちゃんのことを性的に見てても?」
「……ぜ、善処する」
矢継ぎ早に投げかけられる質問へ、俺も次々と答える。
どんな突拍子がない想定も、今の俺には微々たる問題だ。……最後の質問以外は。
「……じゃあ、こんな情けない妹でも、お兄ちゃんは好きでいてくれるの?」
「ああ。世界で一番、愛してるぞ」
最後に間を置いておそるおそる尋ねられると、思わずフッと笑みを零して答えた。
「でも情けない、なんて言うな。俺はお前のそういうところが好きなんだから。だから例え本人でも、俺の大事な妹を貶めるようなことは言わないでくれ」
そして諭すように、言葉を付け加える。俺はカズラの良いところをたくさん知っている。
きっと本人からすれば欠点に思えることでさえも、俺にとっては愛おしく感じてしまう。
だからこそ定家葛と言う人間を、例え本人の口からでも否定はして欲しくなかった。
「……うん、分かった。ありがとう、お兄ちゃん。カズラもどんなことがあっても、お兄ちゃんのことを信じる」
カズラは泣き笑いのような表情を浮かべて、言葉を漏らした。
しかしその顔には先程までの悲哀ではなく、確かな喜びや嬉しさといった感情があった。
「その代わり、お前の気持ちも聞かせてくれ。なにを思ってどう考えるのか、本当の気持ちを教えて欲しいんだ。もう同じ失敗はしたくない。世界で一番、カズラのことを分かってやれるようになりたいんだ」
二度と同じ過ちを犯さないために、俺はカズラに対して一つのお願いをした。
これから気兼ねなく本当の気持ちを打ち明けて欲しい、と。
それができるだけの信頼関係を今、俺たちは築くことができたのだから。
「うん……カズラもお兄ちゃんには、正直に話すよ」
カズラもその言葉に対して、弾けるような笑顔を浮かべて答えた。
そして万感の思いを込めて、まるで満開の桜を連想させるような笑顔で言ったのだった。
「お兄ちゃん、大好きだよ」
その顔は本当に久々に見た、心からの笑顔だった。