蒲公はどこか怯えの色が見て取れる表情で、言葉を続ける。
 カズラは怪訝そうに尋ねるが、どうやら蒲公も冗談を言ってるような風には見えない。
『それは……篝火さんが言い訳してるだけじゃないの?』
「いや、アタシだって最初はそう思ったよ。紫陽のヤツがバックレようとしてる、って」
 もっともなカズラの言葉に対して、蒲公はそれを否定するように首を振る。
「でも話はそれだけじゃないんだ。香(かおる)や雫(しずく)、それから二人と付き合ってたクラスの男子、全員が同じような目にあってんのよ……!」
『月下部(くさかべ)さんと雪ノ下(ゆきのした)さんも……?』
「そう! みんなネットに上げた問題のある写真がばれて、停学になってる……!!」
 震える声で蒲公は言葉を続けた。
 その表情はもはや完全に恐怖が色濃く映されている。
「紫陽の一件でみんな気を付けてたのに、だよ? それでさ全員やっぱり言うんだよ――」
『……自分ではネットに投稿していない、って?』
「…………」
 カズラの問いかけに対して、蒲公は押し黙る。それは肯定の意味と同意義だった。
「みんなが嘘なんかついてない、ってことは分かってる。だって、紫陽のことがあったんだから普通、警戒とかするじゃん? 永翁(ながお)と錦木(にしきぎ)の写真なんて、もう三ヶ月も前の写真だよ? それがなんで、今更掘り返されんの?」
 永翁と錦木、と言うのは先程話題に出た同じクラスの男子生徒だろうか。
 彼らの問題となった写真は三ヶ月も前に投稿されいた、となれば確かに少し不気味だ。
「雫なんて、お店に損害賠償とか請求されてるって聞いたよ? 書類送検とか、もしかしたら退学になるかもしれない。おかしいよ、こんなのあり得ないって……御坊も紫陽が停学食らって、ふさぎ込んでるし」
 蒲公はヒステリーを起こすように、頭を抱えて次々と言葉をまくし立てる。
 その様子は恐怖のあまり、錯乱しているようにも見える。
『御坊って……もしかして、同じクラスだった御坊黒羽(ごぼうくろは)君?』
「そうよ。定家は知らないと思うけど、あの二人付き合ってんの。彼女が変なことに巻き込まれれば、誰だって心配するでしょ」
『そうなんだ……』
 話に出て来た御坊という人物を知っているのか、どこか複雑そうにカズラは呟いた。
「よく考えたらさ……このメンバーって、共通点があるんだよ」