そのトリックだけは結局解けなかったので、こうして尋ねたのだ。
「いや、音楽室の仕掛けはピアノだけのはずだが?」
 しかしその問いに対して、金木は静かに首振って否定した。
「単なる電波障害でじゃないのか?」
『うーん……そうなのかなぁ……』
 自分が仕掛けていない以上、心当たりはないと答える金木。
 カズラはまだ納得していないのか、言葉を濁して唸っている。
「もしかしたら、この音楽室には『授業中に流産した女性教師の子供の霊が夜な夜な現れる』と言う怪談があるから、その赤子の霊が出たのかもしれないな。もっとも、そんな非科学的なことはあり得んがな!」
 金木はリアリストらしく「あっはっは!」と怪談を笑い飛ばす。
「ま、そういうことらしいぞ――って、あれ……切れてる、のか」
 どうやらいつの間にか通話が切れているらしく、カズラの返答は返ってこなかった。
 もしかしたら最初の言ったように、異音の正体は単なる電波障害だったのかもしれない。
 こうして全ての謎を解き明かした俺たちは(飛燕の金で)打ち上げを行い、肝試しの慰労を華々しく行ったのだった。