「うんうん、分かってるから千鳥。きっとあたしたちを驚かせるための〝サ・プ・ラ・イ・ズ〟、だったんでしょ?」
「そうそう。まさか、黙って、全部、懐に入れるつもりなんか微塵もなかったんだろ?」
「う、ぁ……ぇ、っと……そのぉ……」
 歪に口角を吊り上げて、嘲り笑うような笑みを浮かべる俺と柊。
 それは即ち、『はいしか認めない(イエス・オア・イエス)』と言っているのに等しい。
「つ、椿ちゃんはオレのこと、イジメないよね……!?」
 四面楚歌になりかけていた飛燕は、最後の良心こと秋海棠に救いを求める。
「千鳥君……」
「椿ちゃん……!」
 秋海棠はいつものように穏やかな笑みを浮かべながら、飛燕に微笑みかける。
 それを見た瞬間、飛燕は唯一の味方を見つけたと言わんばかりに、表情を輝かせた。
「私――カシラ、ハツ、ガツが食べたいな」
「まさかの四面楚歌だったぁぁぁあァァ――!?」
 ニッコリと天使の笑みを浮かべて秋海棠は、飛燕が抱いていた淡い期待を一刀両断する。
 それを見た飛燕は、頭を抱えて床に崩れ落ちる。
「あ、そうだ。何なら金木も一緒にどうだ? 代金は飛燕が持つから安心しろ」
「む? いいのか?」
「ええ、気にしないで。打ち上げみたいなものよ」
「なるほど。ではお言葉に甘えて、ご相伴に預かるとしようか」
「百歩譲って焼き肉奢るのはいいけど、勝手にメンバー増やさないでもらえますかねぇ!? あと金木、お前もしれっと参加してんじゃねぇ!!」
「「「黙れよ、裏切り者」」」
「ううっ……今回は椿ちゃんまで……オレ、もう立ち直れない……」
 もはや飛燕の静止も聞かずに、俺たちはこのあとの予定を立て始める。
 せっかくなので金木を誘うと、快諾してくれた。
 飛燕が何やら未練がましいことを言うと、俺たち三人は声を揃えてそれを切り伏せる。
 もはや反論する気力もなくなったのか、飛燕は床に伏したまましくしくと項垂れていた。
 だがあえて言おう、自業自得である。
『そう言えば――』
 座り込む飛燕を引きずって音楽室から出ようとした時、不意にカズラが呟きを漏らした。
『音楽室に入ってから、何だか電波が悪いって言うか……赤ん坊の泣き声みたいな音とか、ラップ音が聞こえてくるのはどういうトリックだったの?』
 カズラ曰く、音楽室に入った辺りで、何やら異音が聞こえるようになったらしい。