がっくり、と肩を落とす飛燕。
そんな飛燕とは対照的に、協力者らしい男は「あっはっは!」と明朗に笑っている。
「申し遅れたが、私は金木犀人(かねきさいと)。君たちと同じ三年で、科学部の部長を務めている」
金木と名乗った男は一歩前に踏み出して、快活に笑いながら自己紹介をした。
「科学部って……確かウチの科学部って、なにかのコンテストで表彰されてなかったっけ?」
「国際科学技術コンテストのことかな? それなら我が科学部は、化学グランプリの部門で大賞を受賞したのは記憶に新しい。おそらくその際には、全校集会で表彰されたと思うぞ」
「確か金木君って成績も結構、上位の方だよね? 試験結果の上位で名前、よく見るから」
思い出したように柊が尋ねると、金木はクイッとスクエア型の黒縁眼鏡を指で吊り上げながら頷いて肯定する。
秋海棠もその名前には覚えがあったようで、自信なさげに小首を傾げていた。
言われてみれば確かに壇上で見たような気がするし、名前に関しても学年で有数の秀才と聞き及んでいた。
「……で、その金木がどうして、こんなところにいるんだ?」
金木の素性が分かったところで、どうしてこんな夜の学校に学年でも有数の優等生が居るのか分からなかった。
「実は今回の怪談、トリックを考えたのは私なんだ」
「……は?」
ぶつけた疑問に対して、金木はどこか気恥ずかしそうに頬を掻いて答える。
予想もしなかった返答に、思わず呆けた表情で声を漏らしてしまった。
「夏休みに先駆けて私は、自由研究の題材として〝学校の怪談〟を取り上げることにしたのだよ。この世の事象は全て物理法則で説明ができる、と言うのが私の矜持でね。そこで学校生活において、最も非科学的な怪談を物理的に再現してみせることにしたんだ」
この世の事象は全て物理法則で説明ができる、と言う台詞は実に研究者肌の金木らしい考えだと思う。そんな金木だからこそ、非科学的な怪談と言うテーマに挙げたのだろう。
「ただ仕掛けは思いついたのだが、いかんせんまだ実際に通用するレベルか図りかねていてね。夏休みに入る前にでも私の怪談を誰かに体験してもらって、実際に通用しうるレベルに達しているか確かめたかったんだ。そこで飛燕を頼った、と言うわけさ」
「オレらは中学からの付き合いでさ。だからこいつが困ってんなら、って名乗り挙げたわけよ」
そんな飛燕とは対照的に、協力者らしい男は「あっはっは!」と明朗に笑っている。
「申し遅れたが、私は金木犀人(かねきさいと)。君たちと同じ三年で、科学部の部長を務めている」
金木と名乗った男は一歩前に踏み出して、快活に笑いながら自己紹介をした。
「科学部って……確かウチの科学部って、なにかのコンテストで表彰されてなかったっけ?」
「国際科学技術コンテストのことかな? それなら我が科学部は、化学グランプリの部門で大賞を受賞したのは記憶に新しい。おそらくその際には、全校集会で表彰されたと思うぞ」
「確か金木君って成績も結構、上位の方だよね? 試験結果の上位で名前、よく見るから」
思い出したように柊が尋ねると、金木はクイッとスクエア型の黒縁眼鏡を指で吊り上げながら頷いて肯定する。
秋海棠もその名前には覚えがあったようで、自信なさげに小首を傾げていた。
言われてみれば確かに壇上で見たような気がするし、名前に関しても学年で有数の秀才と聞き及んでいた。
「……で、その金木がどうして、こんなところにいるんだ?」
金木の素性が分かったところで、どうしてこんな夜の学校に学年でも有数の優等生が居るのか分からなかった。
「実は今回の怪談、トリックを考えたのは私なんだ」
「……は?」
ぶつけた疑問に対して、金木はどこか気恥ずかしそうに頬を掻いて答える。
予想もしなかった返答に、思わず呆けた表情で声を漏らしてしまった。
「夏休みに先駆けて私は、自由研究の題材として〝学校の怪談〟を取り上げることにしたのだよ。この世の事象は全て物理法則で説明ができる、と言うのが私の矜持でね。そこで学校生活において、最も非科学的な怪談を物理的に再現してみせることにしたんだ」
この世の事象は全て物理法則で説明ができる、と言う台詞は実に研究者肌の金木らしい考えだと思う。そんな金木だからこそ、非科学的な怪談と言うテーマに挙げたのだろう。
「ただ仕掛けは思いついたのだが、いかんせんまだ実際に通用するレベルか図りかねていてね。夏休みに入る前にでも私の怪談を誰かに体験してもらって、実際に通用しうるレベルに達しているか確かめたかったんだ。そこで飛燕を頼った、と言うわけさ」
「オレらは中学からの付き合いでさ。だからこいつが困ってんなら、って名乗り挙げたわけよ」