カズラの推理力が並々ならぬものだと言うことは、前回の一件をもって飛燕も把握していただろう。どうしても肝試しを成功させたかった飛燕としては、カズラの介入は好ましい展開ではなかったのだ。
こいつが友人の妹を無下にする排他的な性格でないことくらい、それなりに付き合いのある俺は分かってる。だからこそ、そんな飛燕の態度に違和感を覚えてしまったのだろう。
「そもそも、どうしてこんな真似したんだよ?」
飛燕が犯人、と分かったまではいい。
だが結局、どうして自ら怪談を作り上げるような真似をしたのか。それが分からない。
「そこからは私が答えよう」
飛燕の代わりに答えるように、開いていた入り口から男の声が聞こえた。
「ケンゴっち、任務完了だよ」
続いて聞こえる声は、俺もよく知る人間のものだった。
そこには家に帰ったはずの柊と秋海棠が、一人の男を連れて現る。
「なっ――」
飛燕はそこに居るはずのない二人の姿を目の当たりにし、唖然とした表情で声を漏らす。
「なんでナンテンと椿ちゃんが居るんだよ!?」
「ナンテン言うな。実は教室を出る前に、ケンゴっちからメールがあってさ」
「『何とか理由をでっち上げて二人は帰ったフリをしてくれ。それから気付かれないように、俺たちのあとをつけて欲しい。多分、怪しい人間が現れるから』……ってメールが、私とナンちゃんに届いたの」
怪我をして帰ったのではなかったか、そう問い糾す飛燕。
しかし柊は悪戯っぽい笑みを浮かべて、携帯の画面を見せつける。
それは俺がカズラの指示を受けて、二人に送信したメールだった。
秋海棠が言うように飛燕の不意を突いて、俺たちを尾行するように頼んだのだった。
『音楽室の怪談では、トリックに第三者の協力が必要な可能性が高かったから』
「だから二人には飛燕のマークを外れてもらって、協力者を炙り出してもらったわけだ」
「定家君の言った通りだったよ。音楽室の前で、この人が中を覗いてて……」
「んで、こうやって連れてきたわけ」
カズラも絶対の自信があってわけではないが、保険として可能性に賭けてみたらそれが功を奏したらしい。結果として、こうして協力者を見つけ出せたわけだ。
「なるほど……全部、見透かされてたわけね」
「いやはや、音楽室の外からコンポの再生を止めるタイミングを窺っていたら見事、彼女たちに見つかってしまったわけだ」
こいつが友人の妹を無下にする排他的な性格でないことくらい、それなりに付き合いのある俺は分かってる。だからこそ、そんな飛燕の態度に違和感を覚えてしまったのだろう。
「そもそも、どうしてこんな真似したんだよ?」
飛燕が犯人、と分かったまではいい。
だが結局、どうして自ら怪談を作り上げるような真似をしたのか。それが分からない。
「そこからは私が答えよう」
飛燕の代わりに答えるように、開いていた入り口から男の声が聞こえた。
「ケンゴっち、任務完了だよ」
続いて聞こえる声は、俺もよく知る人間のものだった。
そこには家に帰ったはずの柊と秋海棠が、一人の男を連れて現る。
「なっ――」
飛燕はそこに居るはずのない二人の姿を目の当たりにし、唖然とした表情で声を漏らす。
「なんでナンテンと椿ちゃんが居るんだよ!?」
「ナンテン言うな。実は教室を出る前に、ケンゴっちからメールがあってさ」
「『何とか理由をでっち上げて二人は帰ったフリをしてくれ。それから気付かれないように、俺たちのあとをつけて欲しい。多分、怪しい人間が現れるから』……ってメールが、私とナンちゃんに届いたの」
怪我をして帰ったのではなかったか、そう問い糾す飛燕。
しかし柊は悪戯っぽい笑みを浮かべて、携帯の画面を見せつける。
それは俺がカズラの指示を受けて、二人に送信したメールだった。
秋海棠が言うように飛燕の不意を突いて、俺たちを尾行するように頼んだのだった。
『音楽室の怪談では、トリックに第三者の協力が必要な可能性が高かったから』
「だから二人には飛燕のマークを外れてもらって、協力者を炙り出してもらったわけだ」
「定家君の言った通りだったよ。音楽室の前で、この人が中を覗いてて……」
「んで、こうやって連れてきたわけ」
カズラも絶対の自信があってわけではないが、保険として可能性に賭けてみたらそれが功を奏したらしい。結果として、こうして協力者を見つけ出せたわけだ。
「なるほど……全部、見透かされてたわけね」
「いやはや、音楽室の外からコンポの再生を止めるタイミングを窺っていたら見事、彼女たちに見つかってしまったわけだ」