FILE:2『学校の怪談VSひきこもり』解答編



◇カズラの作戦
「はぁ? 飛燕が犯人!?」
 時間は遡り二年生の教室から音楽室に向かう前。
 俺は夜の男子トイレで一人、控えめながらも素っ頓狂な声を上げた。
『少なくともカズラの推理では、ね』
「いきなり適当な理由をでっち上げて一人になれ、って言ったと思ったら……」
 教室で推理を語ったあと、カズラは俺たち二人で会話できる場を設けろと言った。
 トイレに行くと言う口実で抜け出すと、こうしてカズラと声を潜めて話している。
「なんで飛燕が犯人なんだよ。と言うか……犯人って、そもそもなんのだ?」
 いきなり犯人、と言われてもぴんとこない。
 俺たちは今、肝試しをしているが、そこに犯人と言う言葉はどこか違和感を感じる。
『お兄ちゃんは今までの肝試しで、なにかおかしいと思ったところはなかった?』
「おかしい、ねぇ……」
 今までに遭遇した怪談について考えてみる。
「肖像画の件については、悪戯かなんかだろ?」
 あれは目の部分にシールが貼られていただけで、誰かの悪戯と考えるのが妥当だろう。
『それじゃ、教室の件については?』
「忘れ物、とかじゃねぇのかな」
 机の中にミュージックプレイヤーを入れて、忘れて帰ってしまった。
 そういう理由なら説明がつくかもしれない。実際、他のメンバーもその結論に至った。
『ミュージックプレイヤーに関しては、それで説明ができるかもしれない。でも――』
 でも、とカズラは言葉を区切る。
『入ってたデータに関しては、説明がつかないよ』
「確かに、そう言われてみれば……」
 あのミュージックプレイヤーに入っていたデータは、本来の用途に適さないものだった。
 となれば、今回のトリックのために誰かが用意した、と考える方が現実的かもしれない。
『それにあのミュージックプレイヤー、電池の残量があと僅かだった』
「それがなにか関係あるのか?」
 携帯のカメラを使って、ミュージックプレイヤーの画面はカズラに見せていたが、そんなことまで把握しているとは思っていなかった。
 しかしここで電池の残量が、どう関係してくるのだろうか。
『それは再生時間の上限を設定するためじゃないのかな?』
「上限?」
『考えてみてよ、お兄ちゃん。もし充電が満タンだったら、タイマー機能がないミュージックプレイヤーはいつまで再生されてると思う?』
「あ……それこそ電池の持つ限り、朝までだろうな」
『その前に運が悪いと、宿直の先生が見回りに来るタイミングで再生されちゃうよね』