「肖像画も、教室の笑い声も、どれも人為的に怪談を作り上げようとしているように思えるんだよ」
「肖像画は単なる悪戯で、教室のミュージックプレイヤーは忘れ物じゃねぇの?」
「そうだとしたら流石に、タイミングが良過ぎだろ」
「偶然が積み重なって、って線かもしれないだろ? 『路地裏の亡霊』の事件とかは、まさにそれだったし」
「その可能性は否定しない。ただ――」
今まで遭遇した怪談は、どれもトリックによって裏付けされたものだった。
そこには人為的に怪談を引き起こす、と言う意思が見え隠れしているようにも感じた。
飛燕が言うように、偶然が積み重なった末の出来事である可能性は捨てきれない。
しかしそれでも、俺はこう思う。
「この怪談には、裏で手引きしているヤツが存在している。少なくとも俺はそう思ってる」
音楽室のドア前に着くと誰にでも言うことなく、独り言のように呟きを漏らした。
ドアを隔てた音楽室の中からは、確かにピアノの演奏が聞こえてくる。
「開けるぞ」
飛燕の確認も待たずに、躊躇いなく音楽室のドアを引いた。
窓から差し込む月明かりが、薄暗い教室内を淡く照らしている。
「……な、なあ、牽牛」
教室内に踏み込む俺の後ろで飛燕は、震える声で声を掛けてくる。
「ピアノのところ……誰も居なくね?」
飛燕の言うように教室内にはピアノの演奏が響き渡っていたが、ピアノの前に置かれた椅子には誰も座っていなかった。
いつも通りの見慣れた音楽室の風景だが、どことなく不気味に思えるのはそれのせいか。
「……確かに誰もいないな。でもピアノの演奏は、聞こえてくる」
演奏者がいないにも関わらず、ピアノの音色は聞こえてくる。
それはまるで、見えない誰かが演奏をしているかのようだ。
「なあ、牽牛ぉ……もう帰ろうぜ? ヤバいって、流石に」
常識では考えられない状況に飛燕は、今にも泣き出しそうな顔でせがんでくる。
「ヤバいも何も、ここまで来たら確かめるだけだろ?」
しかしそれに構うことなく、俺は足を進めてピアノへと近づいていく。
もうすぐピアノの鍵盤が見える距離まで近づいたと思った瞬間――
「――――ッ……!?」
突如として、目の前から轟音が響いた。
「肖像画は単なる悪戯で、教室のミュージックプレイヤーは忘れ物じゃねぇの?」
「そうだとしたら流石に、タイミングが良過ぎだろ」
「偶然が積み重なって、って線かもしれないだろ? 『路地裏の亡霊』の事件とかは、まさにそれだったし」
「その可能性は否定しない。ただ――」
今まで遭遇した怪談は、どれもトリックによって裏付けされたものだった。
そこには人為的に怪談を引き起こす、と言う意思が見え隠れしているようにも感じた。
飛燕が言うように、偶然が積み重なった末の出来事である可能性は捨てきれない。
しかしそれでも、俺はこう思う。
「この怪談には、裏で手引きしているヤツが存在している。少なくとも俺はそう思ってる」
音楽室のドア前に着くと誰にでも言うことなく、独り言のように呟きを漏らした。
ドアを隔てた音楽室の中からは、確かにピアノの演奏が聞こえてくる。
「開けるぞ」
飛燕の確認も待たずに、躊躇いなく音楽室のドアを引いた。
窓から差し込む月明かりが、薄暗い教室内を淡く照らしている。
「……な、なあ、牽牛」
教室内に踏み込む俺の後ろで飛燕は、震える声で声を掛けてくる。
「ピアノのところ……誰も居なくね?」
飛燕の言うように教室内にはピアノの演奏が響き渡っていたが、ピアノの前に置かれた椅子には誰も座っていなかった。
いつも通りの見慣れた音楽室の風景だが、どことなく不気味に思えるのはそれのせいか。
「……確かに誰もいないな。でもピアノの演奏は、聞こえてくる」
演奏者がいないにも関わらず、ピアノの音色は聞こえてくる。
それはまるで、見えない誰かが演奏をしているかのようだ。
「なあ、牽牛ぉ……もう帰ろうぜ? ヤバいって、流石に」
常識では考えられない状況に飛燕は、今にも泣き出しそうな顔でせがんでくる。
「ヤバいも何も、ここまで来たら確かめるだけだろ?」
しかしそれに構うことなく、俺は足を進めてピアノへと近づいていく。
もうすぐピアノの鍵盤が見える距離まで近づいたと思った瞬間――
「――――ッ……!?」
突如として、目の前から轟音が響いた。