そう言えばこの話を話題に挙げたのは、確かコイツだったな。
「無人の教室で最初は、囁くような笑い声が聞こえて――」
 ――クス、クスクスクス。
「…………」
「…………」
「…………」
 四散して教室の中を手分けして捜査していた俺たちは、思わず黙り込んでしまった。
 どこから聞こえてくるのか分からないが今さっき、確かに声のようなものが聞こえたような気がした。
「なあ、これってもしかして――」
「これが例の――」
「声――?」
 ――クスクスクス、クスクスクス!
 突然の出来事に、俺たちはざわめき立つ。
 今の教室には、俺・飛燕・柊・秋海棠の四人しか居ないはずだ。
 しかし声は、どこからか聞こえてくる。姿は見えないが、俺には確かに聞こえる。
「ど、どこから聞こえてくるのよ……ッ!?」
「えっと、ええっと……ど、どこぉ?」
 慌てふためきながら俺たちは、声の発生源を突き止めようと躍起になる。
 だが成果はなかなか出ず、そんな時に飛燕がポツリと思い出したように呟いた。
「そういやこの話には、続きがあってな……」
「続き?」
「最初は囁くような笑い声が聞こえてくる、って言ったよな?」
「ああ……」
「でも、その次には――」
 震える声で飛燕は言葉を続ける。
 その話の続きが気になった俺は、大人しく耳を傾けることにした。
「ケタケタ、って――けたたましい笑い声が聞こえてくるんだ……!」
 ――ゲラゲラゲラ! ゲラゲラゲラ!!
「う、うわぁぁあァァ――!!」
「キャァァアァァ――!?」
「~~~~ッゥ!?」
 まるでタイミングを計ったかのように、今度はけたたましい笑い声が教室内に響き渡る。
 その笑い声はまるで悪魔が高らかに、俺たちを嘲り笑っているようでもあった。
 飛燕、秋海棠は思わず叫びを上げてしまい、柊は必死に悲鳴を押し殺しているが、その表情は恐慌が支配している。
『お兄ちゃん。分かってるね?』
「幽霊の正体見たり枯れ尾花、だろ?」
『Exactly(そのとおりでございます)』
 確認するように尋ねるカズラに対し、淀みなく答えてみせる。
 他のメンバーが慌てふためいている最中、俺は不思議と冷静だった。
『机の中、片っ端から調べてみて』
「了解」
 カズラの指示を聞くと俺は、頷いて慌てふためく一同を見渡す。
「は、早く逃げようぜ!?」
「待てよ、飛燕」