◇いざ肝試しへ
「よし、全員揃ったな?」
それから一週間後。俺たちは肝試し当日を迎えていた。
予定通りの時間に裏門前に集合した一同に対して、飛燕は確認するように声を掛けた。
「ああ、全員揃ってるな」
「こっちは準備もバッチリよ」
「う、うん。なんだか緊張するね……」
俺、柊、秋海棠は、飛燕の言葉に頷いた。各人その表情には、緊張の色が感じられる。
「よし、それじゃあ行くぜ」
予定通り正面玄関から校内に入っていく。
下駄箱から上履きを取り出すと、靴と入れ替わりに履いて廊下へと足を踏み出した。
「本当に警報は大丈夫だったな」
「おう、天文部と連携はバッチリだからな」
無事に校内への侵入を果たした俺は安堵の息を漏らす。
ちなみに天文部は今から一時間ほど前から屋上に集合していて、宿直の教師立ち会いの下で天体観測を行っているらしい。
「夜の学校って今まで意識はしなかったけど、やっぱり不気味よね……」
四人で廊下を歩いていると柊がポツリと呟きを漏らした。
「へぇ~、ナンテンでもやっぱり怖いんだ」
「ナンテン言うな。それに失礼ね……あたしだって、普通に怖がるわ」
それを聞いた飛燕は、茶化すようにニヤリと笑いながら囃し立てる。
柊はムスッとした表情で、失言を恥じるように表情をしかめた。
「プププ、ナンテンちゃんも女の子らしいとこあったのね~。いいんでちゅよ~怖かったら僕の後ろに隠れてても~??」
「…………」
「ねぇねぇ、ブルブル震えてるけど今どんな気持ち? ねぇどんな気持ち??」
飛燕は柊の弱みを握って、水を得た魚のように殴りたくなるような笑みを浮かべている。
確かにその言葉通り柊は震えているが、明らかに怒りによるものだろう。
「――貴様を題材にBLを書いてやる」
「……へ?」
そんな飛燕を目の当たりにして、柊はポツリと呟きを漏らした。
地獄の底から響くような迫力のある声に、飛燕は思わず表情を引きつらせる。
「千鳥を受けにして、攻めはケンゴっちにやってもらおう。誘い受けな癖に××したら××は×××になって、最後には×××××止めてと泣き叫んでも×××は止まらない」
「えーと、あの……柊さん?」