「そっか……じゃあ、しょうがないね」
しかし、カズラは思いの外、あっさりと引き下がった。
そして俺から離れると、パソコンの前に座りながら思い出したように声を漏らす。
「Dドライブの資料フォルダ」
「え?」
「ああいうのは、もうちょっと分かりにくいところに隠さないとね☆」
「――――!?」
ボソッと呟いた言葉を聞いた瞬間、背筋に悪寒のような怖気が走るのが分かった。
そして意味深に笑いながら続けられた言葉で確信した俺は、一目散に自分の部屋に向かって駆けていく。
「カズラ……お前……」
自分の部屋からカズラの部屋に戻ってくると、俺は声をわななかせながら声を漏らす。
「俺の……俺の――俺のお宝画像フォルダをどこにやりやがった!?」
「クックック……お兄ちゃんの画像フォルダは、人質に取らせてもらったぜ」
怒りに震える俺を見て、カズラはニヤァと邪悪な笑みを浮かべて答える。
「あれはな、俺が長い年月をかけてコツコツと集めてきたかけがいのない宝物なんだよ……画像との出会いは一期一会なんだぞ……!?
その時に保存した画像が、また同じ場所にあるとは限らないんだぞ……!
それを……お前は……」
崩れ落ちるように床にへたり込むと、俺は部屋での惨状を思い出す。
俺のパソコンに保存していたお宝画像(意味深)は、いつのまにか姿を消していた。
長い年月、苦楽を共にしてきた言わば戦友をこの妹は人質に取っているのだ。
「ちゃんといくつか画像は残してあげたでしょ?」
「残ってた画像は、全部妹モノじゃねぇか!
しかも、見覚えのないヤツばっかり!!」
「そろそろお兄ちゃんは、妹属性に目覚めるべきだとカズラは思うんだ」
「ノーモア妹、ワンスモア巨乳」
「大丈夫、大丈夫。
最初はみんな怖いって言うけど、すぐに妹に夢中になるよ」
「ドラッグみたいな誘い文句やめてください」
画像フォルダの残骸には、何故か妹モノの画像が代わりに置き換えられていた。
どれもそこはかとなくカズラに似ていたので、謹んで一括削除したが。
「畜生……返せよ。宝物なんだよ………足だろうが!
両腕だろうが!
……心臓だろうが、くれてやる!!」
勝ち誇った表情で笑うカズラを見上げて、キッと睨み付ける。
「だから!! 返せよ!!
たった一つの宝物なんだよ!!」
「そんな心理の扉を叩く勢いで言われても……」
人体錬成で弟を失った兄よろしくの形相で声を荒げると、カズラは引き気味に後ずさる。
「さてお兄ちゃん、君には二つの選択肢がある。
一つ目はカズラのお願いを断って、お宝画像が永遠に消失する。
二つ目はカズラのお願いを聞き入れて、お宝画像が戻って来る」
クツクツと肩を震わせて、カズラは俺を見下ろして選択肢を突きつける。
「賢くて妹に優しいお兄ちゃんなら、答えは一つ……だよね?」
「くっ……」
邪悪に笑うカズラに対して、俺は短く唸ることしかできなかった。
「ったく……分かった、分かったよ」
暫くの沈黙の後、ついに俺は根負けして溜め息混じりに負けを認めた。
「とりあえず、みんなに聞いてみるよ」
「え……本当?」
それを聞くとカズラは一転して表情を輝かせる。
「もし、それでダメなら素直に諦めろ。いいな?」
「わぁいお兄ちゃん、カズラお兄ちゃん大好き!」
念を押すように言うが、カズラは満面の笑みで勢いよく抱きついて来る。
その衝撃でベッドに押し倒されながら天井を見つつ、つくづく妹には甘いものだと苦笑を漏らしたのだった。
――決して、画像が惜しかったわけではない。
自分にそう言い聞かせる。
しかし、カズラは思いの外、あっさりと引き下がった。
そして俺から離れると、パソコンの前に座りながら思い出したように声を漏らす。
「Dドライブの資料フォルダ」
「え?」
「ああいうのは、もうちょっと分かりにくいところに隠さないとね☆」
「――――!?」
ボソッと呟いた言葉を聞いた瞬間、背筋に悪寒のような怖気が走るのが分かった。
そして意味深に笑いながら続けられた言葉で確信した俺は、一目散に自分の部屋に向かって駆けていく。
「カズラ……お前……」
自分の部屋からカズラの部屋に戻ってくると、俺は声をわななかせながら声を漏らす。
「俺の……俺の――俺のお宝画像フォルダをどこにやりやがった!?」
「クックック……お兄ちゃんの画像フォルダは、人質に取らせてもらったぜ」
怒りに震える俺を見て、カズラはニヤァと邪悪な笑みを浮かべて答える。
「あれはな、俺が長い年月をかけてコツコツと集めてきたかけがいのない宝物なんだよ……画像との出会いは一期一会なんだぞ……!?
その時に保存した画像が、また同じ場所にあるとは限らないんだぞ……!
それを……お前は……」
崩れ落ちるように床にへたり込むと、俺は部屋での惨状を思い出す。
俺のパソコンに保存していたお宝画像(意味深)は、いつのまにか姿を消していた。
長い年月、苦楽を共にしてきた言わば戦友をこの妹は人質に取っているのだ。
「ちゃんといくつか画像は残してあげたでしょ?」
「残ってた画像は、全部妹モノじゃねぇか!
しかも、見覚えのないヤツばっかり!!」
「そろそろお兄ちゃんは、妹属性に目覚めるべきだとカズラは思うんだ」
「ノーモア妹、ワンスモア巨乳」
「大丈夫、大丈夫。
最初はみんな怖いって言うけど、すぐに妹に夢中になるよ」
「ドラッグみたいな誘い文句やめてください」
画像フォルダの残骸には、何故か妹モノの画像が代わりに置き換えられていた。
どれもそこはかとなくカズラに似ていたので、謹んで一括削除したが。
「畜生……返せよ。宝物なんだよ………足だろうが!
両腕だろうが!
……心臓だろうが、くれてやる!!」
勝ち誇った表情で笑うカズラを見上げて、キッと睨み付ける。
「だから!! 返せよ!!
たった一つの宝物なんだよ!!」
「そんな心理の扉を叩く勢いで言われても……」
人体錬成で弟を失った兄よろしくの形相で声を荒げると、カズラは引き気味に後ずさる。
「さてお兄ちゃん、君には二つの選択肢がある。
一つ目はカズラのお願いを断って、お宝画像が永遠に消失する。
二つ目はカズラのお願いを聞き入れて、お宝画像が戻って来る」
クツクツと肩を震わせて、カズラは俺を見下ろして選択肢を突きつける。
「賢くて妹に優しいお兄ちゃんなら、答えは一つ……だよね?」
「くっ……」
邪悪に笑うカズラに対して、俺は短く唸ることしかできなかった。
「ったく……分かった、分かったよ」
暫くの沈黙の後、ついに俺は根負けして溜め息混じりに負けを認めた。
「とりあえず、みんなに聞いてみるよ」
「え……本当?」
それを聞くとカズラは一転して表情を輝かせる。
「もし、それでダメなら素直に諦めろ。いいな?」
「わぁいお兄ちゃん、カズラお兄ちゃん大好き!」
念を押すように言うが、カズラは満面の笑みで勢いよく抱きついて来る。
その衝撃でベッドに押し倒されながら天井を見つつ、つくづく妹には甘いものだと苦笑を漏らしたのだった。
――決して、画像が惜しかったわけではない。
自分にそう言い聞かせる。