エピローグ 俺の妹は――




 長かった夏休みもついに終わり、今日からついに新学期を迎える。
 久しぶりに制服を着て、俺は玄関で靴を履いていた。
「それじゃ、行ってきます」
 靴を履き終えると、ドアを開けて行ってきますと声をかける。
「――待って!」
 ドタバタと騒がしく歓談を降りてくる音と共に、聞き覚えのある声が振ってきた。
「はぁ……はぁ……はぁ――」
 呼吸を荒げて二階から降りてきたのは、案の定カズラだった。
 その服装は制服で、通学用のカバンも持っている。
「今日はカズラも……一緒に行く、から」
 少しはにかむように、カズラはポツリと告げる。
 そんな妹の姿を見て俺は、思わず笑みを漏らしてしまう。
「まだ最初は保健室登校だけど……御坊君が戻ってくるまでに、少しでも学校に慣れておきたいんだ」
「そうか」
 こちらに歩み寄ってくると、カズラは気恥ずかしそうに言葉を続ける。
 胸が一杯になりながらも、大きく頷いてカズラに手を差し伸べた。
「なら早く行こうぜ。駅までは一緒だろ?」
 カズラは今日、確かな一歩を踏み出した。
 これからどんな苦難がカズラを待ち受けているのか、俺にも分からない。
 ただ――
「――うん!」
 弾けるような笑顔で、カズラは俺に笑いかけてくる。
 これからのカズラの学校生活がより良いものになるように、俺は願ってやまなかった。
 季節は巡り、俺たちはまた時を重ねていく。止まっていた時間は再び動き出し、以前よりも確かな一歩を踏み締めながら、俺たちは二人並んで歩いていく。
 願わくば――これからはずっと、カズラの隣を歩いていけるように。
 お互いに支え合って、生きていければいい。
 そんなことを心の中で思ってしまうのだった。

 俺の妹は引きこもり――そうカズラを紹介することは、もうすぐなくなるのかもしれない。
〈了〉