そして少し頬を赤らめ、媚びるような声で言葉を続けようとする。
「御坊のこと、どうするつもりだ?」
 しかし俺はそれを遮るように、問いを投げかける。
「え……どうするって――」
 蒲公はキョトンと声を漏らし、不思議そうに首を傾げる。
「そりゃあ、ケジメつけさせるに決まってるじゃないですか。あんな酷いことしといて、ただで済むなんて虫が良すぎますし」
 当たり前だ、と言わんばかりに答える蒲公。
 それを見ると静かに立ち上がって、テーブルを挟んで座っている蒲公の元へ歩き寄る。
「え? 牽牛、さん……?」
 いきなりの行動に、蒲公は呆気にとられたように間抜けな声を漏らす。
「ちょ、ちょっと、どうしたんですか? 顔、怖いですよ……?」
 蒲公の前に辿り着くと、俺は見下ろす形で真っ直ぐに見据える。
 そんな様子に蒲公は戸惑い、引きつった笑みを浮かべながら問いかけてくる。
「お前はメッセンジャーだ」
「へ?」
「今回のことをお仲間全員にしっかり伝えろ」
 淡々と感情を殺した声で、蒲公を見下ろしながら言葉を続ける。 
「俺は御坊からお前の弱みを教えてもらった。その意味が分かるか? つまり、ボタン一つでお前も被害者の仲間入りってことだ。いっとくか退学? 楽しむか停学生活? 最終学歴中卒で社会の荒波に放り出されてみるか?」
 もちろんこれは嘘だ。俺は御坊にそんなことは教えてもらっていない。
 だけどそれを悟られないように、高圧的な態度でハッタリをかます。
「そうなりたくなきゃ、素直に言うことを聞け。それとカズラと御坊には、もう手を出すな。これから先も誰かをイジメたりするな。それを守らなかったら――」
 感情を極力殺して、機械のように冷淡な声になるように淡々と言葉を続ける。
 この女が一生、俺に刃向かう気なんて起こさせないためにも――ここが勝負所だ。
「俺の人生を犠牲にしてでも、お前らの人生をメチャクチャにしてやる。それだけの覚悟が俺にはあるし、冗談を言ってるつもりもない」
 顔をぐいっと近づけて、お互いの呼吸音が聞こえる程に近くまで寄せて。
 俺は精一杯の悪意と敵意を込めて、目の前の女に向かって言い放つ。
「あ、っひあ……あ――」
 蒲公は恐怖に支配された表情で、声にならない悲鳴を漏らしていた。
 がちがちと歯を鳴らして、不細工な表情で身体を震わせていく。
「早く失せろ」