「あとは定家さんの推理通りだよ。僕は篝火の携帯から写真をコピーして、Shabetterのアカウントを乗っ取って飲酒画像を投稿した。その後に拡散工作をして、だめ押しに学校へのメールを送った。あとの四人も同じだよ」
 淡々と説明を終えると、御坊君は脱力するように目を閉じた。
 もう語ることはない、とでも言うようにそれ以上は何も言わなかった。
「……月下部さんと雪ノ下さんの恋人も、ターゲットにしたのはどうして?」
「アイツらも定家さんの話を聞いて、嘲笑ってた……僕にはそれが許せなかったんだ」
 被害者たちの恋人も、今回のターゲットに含まれていた。
 その理由を問うと御坊君は、顔を俯かせながら静かに答えた。
「これで全部だ。これから僕は麒麟児先生のところへ言って、全てを話してくるよ」
 フッと苦笑を浮かべて御坊君は、教室のドアに手をかけて言う。
 おそらくこれから、今回の事件について自供をするつもりなのが分かった。
「待って、御坊君――一つ、聞いていいかな?」
 そんな彼の背中に対してわたしは、思わず呼び止めるように声をかけてしまった。
「御坊君は……本当にこんなやり方でよかったの!?」
 声を張り上げてわたしは、御坊君に問いかける。
「御坊君の気持ち、わたしには良く分かる。でもこれじゃ、篝火さんたちと一緒だよ? 自分勝手に相手を傷つけて、これからの将来を台無しにするなんて……御坊君は本当にやりたかったの……!?」
 イジメの恐怖を知るからこそ、誰よりも御坊君はわたしの辛さを分かってくれた。
 でもだからといって、こんな方法は間違っていると思った。
 彼は自分が一番嫌悪したことを自分自身の手で行っていたのだから。
「……僕は多分、自分の失敗を帳消しにしたかったのかもしれない」
 御坊君はドアに手をかけたまま動きを止めて、ポツリと呟きを漏らした。
「あの時、定家さんの味方になれなかったことを、ずっと後悔してたんだ。だから君のためになんて大義名分を掲げて、自分の嫌悪する行為も正当化してきたつもりになってた」
 自嘲気味に笑って、御坊君は言葉を続ける。
「馬鹿だよね。今更そんなことしたって、定家さんはきっと喜ばないのに。でもそうすることでしか、僕は自分を許すことができなかったんだ。結局、僕もアイツらと変わらない」