イジメのターゲットと言う爆弾を回された人間は、それが爆発しない内に誰かに爆弾を押しつけていく。長い時間、抱えていれば爆弾は爆発する。中には最初に爆弾を用意する人間もいるし、爆弾が回されないように上手く立ち回っている人間もいる。
そしてわたしや御坊君のように、誰かに爆弾を押しつけることへ抵抗を覚え、爆発するまで抱えてしまう人間もいる。そんな残酷な遊びに私たちは巻き込まれているのだろうか。
「そんな時――中学の同級生……当時、僕をイジメるきっかけになった奴と再会したんだ」
感情を感じさせない淡々とした声で、御坊君はポツリと呟きを漏らす。
「出会ったのは本当に偶然だった。街中でバッタリ会って、さ。僕は気まずくなって逃げようとしたけど、そいつは僕と話がしたいって言ってきた」
「話……?」
「そうだよ。そいつはまず、僕に中学の時のことを謝った。些細なことで酷いことをしてしまったって、深々と頭を下げてね」
「御坊君は……それでどうしたの?」
「僕はそれを見て何も言えなくなった。当時は殺してやりたいくらい憎んだけど、今更その怒りをぶつけても過去は戻って来ない。そう考えると虚しくなって、この場から一刻も早く去りたくて適当に答えたんだ」
フッと疲れたように笑うと、御坊君は視線を床へと落とす。
彼の気持ちは痛いほどに分かる。仮に卒業後、篝火さんが当時のイジメについて謝罪したとする。きっとその時は、御坊君と同じような気持ちになるだろう。
いくら謝られても心の傷は癒えないし、失った時間も戻らない。だとしたら唯一思うのは放って置いて欲しい、という心境になると思う。
「ここからが傑作なんだけど……僕に許されたと勘違いしたそいつは、自分の近況を話し始めたんだよ。今、自分はどんな高校生活を過ごしているか。それがいかに素晴らしく充実しているものか。そいつは嬉々として僕に語った」
そう言った瞬間、御坊君の口が禍々しく吊り上がったのが分かる。
まるで嘲笑うかのように、その表情に浮かんでいるのは嘲りだった。
「それを見た瞬間、僕はようやく分かったんだ――連中にとって僕たちは、その程度の存在なんだってさ」
クツクツと肩を震わせて、御坊君は嗤っていた。
おかしくておかしくて堪らない、そういうように狂気的な笑みを浮かべている。
そしてわたしや御坊君のように、誰かに爆弾を押しつけることへ抵抗を覚え、爆発するまで抱えてしまう人間もいる。そんな残酷な遊びに私たちは巻き込まれているのだろうか。
「そんな時――中学の同級生……当時、僕をイジメるきっかけになった奴と再会したんだ」
感情を感じさせない淡々とした声で、御坊君はポツリと呟きを漏らす。
「出会ったのは本当に偶然だった。街中でバッタリ会って、さ。僕は気まずくなって逃げようとしたけど、そいつは僕と話がしたいって言ってきた」
「話……?」
「そうだよ。そいつはまず、僕に中学の時のことを謝った。些細なことで酷いことをしてしまったって、深々と頭を下げてね」
「御坊君は……それでどうしたの?」
「僕はそれを見て何も言えなくなった。当時は殺してやりたいくらい憎んだけど、今更その怒りをぶつけても過去は戻って来ない。そう考えると虚しくなって、この場から一刻も早く去りたくて適当に答えたんだ」
フッと疲れたように笑うと、御坊君は視線を床へと落とす。
彼の気持ちは痛いほどに分かる。仮に卒業後、篝火さんが当時のイジメについて謝罪したとする。きっとその時は、御坊君と同じような気持ちになるだろう。
いくら謝られても心の傷は癒えないし、失った時間も戻らない。だとしたら唯一思うのは放って置いて欲しい、という心境になると思う。
「ここからが傑作なんだけど……僕に許されたと勘違いしたそいつは、自分の近況を話し始めたんだよ。今、自分はどんな高校生活を過ごしているか。それがいかに素晴らしく充実しているものか。そいつは嬉々として僕に語った」
そう言った瞬間、御坊君の口が禍々しく吊り上がったのが分かる。
まるで嘲笑うかのように、その表情に浮かんでいるのは嘲りだった。
「それを見た瞬間、僕はようやく分かったんだ――連中にとって僕たちは、その程度の存在なんだってさ」
クツクツと肩を震わせて、御坊君は嗤っていた。
おかしくておかしくて堪らない、そういうように狂気的な笑みを浮かべている。