女中の顔がみるみる泣き出しそうに歪んでいく。

「お客様にお出しするまんじゅうがひとつ、足りないんです……」

はぁーっ、とついつい口をついてため息が落ちる。

「その、朝はあったんです! 
でも、そろそろお時間なので準備しようと思ったら足りなくて! 
断じて私が、つまみ食いしたわけではないではないですから!
信じてください!」

「……信じるよ」

慌てる女中が気の毒で笑って答えると、彼女はほっと息を吐き出した。

「これで追加のまんじゅうを買ってきなさい」

懐から財布を出し、女中に金を握らせる。

「そ、そんな!」

「いいから。
早く買ってこないと父上に見つかって、酷く叱られてしまうぞ?」

「あ、ありがとうございます!」