目が悪く、棒っきれみたいな僕が軍人など務まるとは思えない。
第一、竹刀を振って尻餅をつくような体たらく。
こんなの、戦場に出れば一発で死ぬに決まっている。

「父上は僕を殺したいのだろうか……」

父に他意がないのはわかっている。
武士の子供が新時代、就くべき職業は軍人しかない。
そう信じ切っているのだろう。

「人には向き不向きってもんがあるんですよ……」

転がっていた眼鏡を拾うと歪んでいた。
あとで眼鏡屋へ行かねばならない。

痛む頬を押さえるように頬杖をつき、本を開いた。

本を読むのは好きだ。
その間、僕は教師でも役者でも、女にすらなれる。

いつか、自分もこんなものを書いてみたいと常々思っていた。

「……自由、か」

新時代がきて身分はなくなった。
もう、武士の子は武士、商人の子は商人にしかなれなかった時代ではない。

なのに父はいつまで、古くさい身分に拘るのだろう。

「僕が悪いのもわかっているけれど」